ワンドオブフォーチュンF
□眠る君を見て希求せしこと
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ひらひらと、花弁が舞った。
それが髪に絡みついたのに気づかずに、エストは静かに本の内容を理解しようと読み耽る。
しかしそれに気づいたルルは、くすくすと笑って彼の髪に手を伸ばした。
「……なんですか」
「ふふっ、エストの髪に花びらがついたの! ほら、動かないで」
「……………」
やや硬い面持ちで、エストは大人しく座り込んだまま膝立ちになるルルにこうべを差し出すようにして顎を少しだけ引く。そんな彼に柔らかな笑みを投げ掛けながら、ルルは彼の髪に触れた。
「エストの髪って、私、好きだわ」
「……は? 何を言ってるんですか」
「だって、真っ直ぐで柔らかくて、すっごくさわり心地がいいもの!」
「……そう言いながら花びらをとった後も弄らないでいただけるとありがたいんですが」
楽しげな声をたててエストの髪を指に巻きつけたりして遊ぶルルに、若干不満げな表情でそう言い募る。
「あ、そうよね。本を読む邪魔をしちゃったわ。ごめんなさい」
素直に従ったルルにため息をつきたいのを堪えつつ、エストは再び本に視線を落す。