ワンドオブフォーチュンF
□I get the feeling, the more involved I get with you.
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娯楽室にて。
眼前に突きつけられた花を見て、手の中にあるバレンタインチョコを渡そうと手を彼に突き出したルルは、思わず彼を半眼でねめつける。
「……アルバロ、一体これはなに?」
「ん? 今日バレンタインデーだし。とある国ではこの日は男が女に花をあげる日なんだよ?」
悪戯を企むような含んだ笑みを唇に刻みつけながら、アルバロは傍にいたノエルの首に手を回す。
「ねぇ、ノエルくんだって思うでしょ? こういう特別な日は何か贈らなきゃって」
「ええい、知るか! というか、普通は郷に入っては郷に従えだろう! アルバロ、貴様はホワイトデーに贈るのが筋だと思うが!?」
「やだなぁ、ノエルくん。そんな保守的なことばっかり言ってるから好きな子に好かれないんだよ?」
眉尻をさげ、そう零したアルバロにノエルは愕然としたように眼を見開いた。遅れてがっくりと膝をつくノエルに駆け寄り、ルルは思わずアルバロに反駁する。
「酷いわ、アルバロ! 確かにノエルは堅実な分面白みがないし、若干自己愛が激しいけど、あなたよりはずっと好かれる性格のはずよ!」
「……ルルちゃん、君だって随分酷いこと言ってると思うんだけど」
ルルの中で完全に硬直したノエルを見下ろし、アルバロは眉尻を下げる。自分の言葉はともかく、ルルの言葉で徹底的に打ちのめされたようで、酷く落ち込んでいる。