ワンドオブフォーチュンF
□鼓動の音を次第に強めて
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―――これほどまでに、惹かれるとは、と。思わず唇に酷薄な笑みが浮かぶ。
寮へと生徒たちが戻る中、自身が待つのは自分との賭けに可笑しな結果を齎した少女だ。自分のすべてを知ってなお、自らの命を賭けることで自分を縛り付けた……可笑しな、女。
「……俺があいつを好きになる、か…」
口にしても、あまりにも実現するには程遠いであろう理想に、思わず馬鹿馬鹿しくなって嘲笑する。彼女の奇天烈な考えはいつものことだが、あの晩に見せた彼女の決意と行動は、あまりにも愚かしくて、最高に変わった行動だ。
「……人殺しの命など、自分の命を賭けてまで縛るなんて、頭の螺子が数本抜けているとしか思えない」
くつくつと喉を鳴らしながら、アルバロは未だに学院から出てこない姿を思い浮かべて冷笑を浮かべる。
「……さてさて、彼女はこれから俺にどんなものを見せてくれるのやら…」
前向きに、ひたむきに頑張る彼女の姿はもう見飽きた。
だが、すべてを知ってなおこちらに近づいてくる彼女の行動に、興味がある。