ワンドオブフォーチュンF
□朝日影の場所
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その花の居場所は、三人だけの秘密。
けれど、今は―――…。
「ラギ、いったい何処に行ったのかしら…」
ある休日のこと、随分遅く起きたからか食堂に恋人の姿を見つけられなかった。おかげでこうしてホールの中央に佇んで人波に視線を向けてその姿を探すのだが、生憎自分が食堂での彼の食べっぷりを見て気づかないわけが無いのは当然で。
決して約束をしているわけではない。だが、毎日傍にいたからか、いないだけで心の中にどこか空洞が出来たような感覚すら覚える。
「……うーん…。裏山、かしら…?」
だが、最近の彼が裏山へ行くのは、彼の剣に潜むドラゴンに従属せし生物―――サラマンダーに力を与えるために成獣へと姿を変えるときのみに限ってきた。
ゆえに彼が成獣へと変化したらその身に纏う厳かで侵してはならないと本能的に悟らせる威圧的な空気が伝わってくるはずだし、それを自分が肌で感じないなんてことはないと思う。それくらいに、彼のことは分かっているつもりだったから。
だが、そうなるとやはり彼のいつもいる場所にはいないことになる。さて、どうしたものか―――