ワンドオブフォーチュンF

□In the future , I cannot do it by a calculation
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 ルルが走り去った後―――…。


「………必死の説得も無に帰したとなると、憐れだな…」


 食堂にてルルとラギの会話を遠巻きに見守っていたノエルは、深い憐憫を含んだまなざしで少女が姿を消したほうへと視線を向ける。


「ルルちゃんにどんなに説得したって無駄だよ。頭で考えるより先に身体が動いちゃうんだからね」


「………否定はしませんが、その前にどうして寮に戻ろうとしているところを邪魔したんですか、アルバロ」


「やだなぁ、エストくん。ラギくんに助言までしたから結果を見たかったんじゃないの?」


「あいにく興味がありません。それに、ルルの後先を省みない性格からして結果は目に見えてました」


 さらりとした発言に、ビラールは苦笑する。


「ですが、そこがルルの、いいところ。……でも、それなら、最初からアドバイス、しなけくてよかったと思いマス」


「………人間の姿を維持できたのなら、竜になったときよりはまだ食事の量が幾分少ないので、僕の生活の平穏のために、一縷の希望にかけただけです。……もういいですか? 寮に戻ります」


 他人事だからと何事もなかったかのように振舞って、エストは足早にその場を去っていく。


 そんな彼を見送りながら、アルバロは人の悪い笑みを浮かべた。


「明日、ラギくんにどうやって教えてあげようかな、今日のこと」


 その言葉に、ビラールが眉尻を下げる。


「………ほどほどに、してあげてくださいネ、アルバロ」


「うん―――ほどほどに、ね」


「………心配なのは、僕だけなのか…?」


 ぼそりと、ノエルがそう呟いていたのは、アルバロに聞こえていたかどうか―――それは、彼にしかわからない。







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