ワンドオブフォーチュンF

□In the future , I cannot do it by a calculation
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「―――生き返った…」


「よ、よかった………」


 ラギがあまりの空腹に昏倒し、慌ててルルが食堂へ駆け込んだのが一時間ほど前。プーぺに焼いた肉を持ってきて貰い、彼を叩き起こして落ち着くまで食べさせた。


 結果、見事に回復したラギだが―――何か忘れているような気がして首をひねる。


「………この様子では、成果は芳しくなかったようですね」


 背後から聞こえてきた声に振り返り、何故かどっと疲れたとでも言うようにじっとこちらを見つめる翡翠の瞳とぶつかる。途端、頭の中に閃いた記憶に、ラギは思わず立ち上がる。


「―――あぁっ、思い出した!」


「………何を思い出したか知りませんが、取り合えず僕は失礼します。久々の食欲は一気に失せましたから」


「えぇ?! エスト、ちゃんと食べなきゃ駄目よ!」


「あいにく入り口の近くであなたたちの姿を認めたときに踵を返すつもりでしたが、食堂に入ってくる人波に逆らえずにここまで来てしまっただけです。そのついでに、入り口近くでは食べないで欲しいという願いを申し出るために声をかけただけですので」


 すらすらといいたいことだけ言って去ろうとするエストを、ルルは必死で引き止める。


「せっかく来たんだから、一緒に食べましょう!」


「結構です。既に食欲は失せてますし、なによりあなた方と席を共にするのは絶対に嫌ですので」


 いっそ清々しいと思えるほどのまぶしい笑顔でそう言い切り、エストはルルが掴む腕を振り切り、足早に立ち去った。―――何故だろう、若干腹が立つ。………しかし、今はそんなことどうでもいい。
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