ワンドオブフォーチュンF
□終わりの見えぬ受難曲(パッション)
6ページ/7ページ
「いやぁ、美味しい状況になったのに、すぐ戻るなんて惜しいことしてるよね」
肉に齧りつきながら気に食わない声の持ち主を黙殺させようと試みるが、あいにく効くはずがなくラギは盛大に心の中で舌打ちする。
「せっかくちっちゃい姿になって大好きなひとに抱き締められてるってのに、そこでぐっと行かないなんて、ラギくんってば、男が廃るじゃないか」
「―――うるせぇ」
結局視線は無視されるから、言葉で制止を掛けようと試みる。
「あ、それともあの姿じゃルルちゃんといちゃつけないから元に戻るのかな?」
やはり、効果は無いのだろうかと、もう一度制止を掛けてみる。
「―――だから、うるせぇ」
「でも、俺はあの姿でルルちゃんに抱き締められてるラギくんの顔は、結構―――」
「黙りやがれ、この野郎! いい加減にしねぇと―――」
「ら、ラギ、落ち着いて!」
ぎゅっと後ろから抱擁され、折角食べたばかりなのにという思う前に。
―――再び小さな竜の姿に変わった恋人を見つめて、ルルは引き攣った笑みで笑う。
「……いい加減学習しやがれ、このアホ―――!!!」
その叫びは、かなり広範囲に響いたとか。
体質改善とか、黒の塔の連中とか、いろいろ頭を悩ませる問題はあるけれど。
……とりあえず、桃色の髪をした少女の学習力を鍛えるのがこの受難を回避する一番の策かもしれない。
あとがき