ワンドオブフォーチュンF

□終わりの見えぬ受難曲(パッション)
2ページ/7ページ

「ラギ!」


「んぁ? ……あぁ、ルルか。どうした?」


 朝方の出来事の所為で苛立っていたからか、ろくに昼寝する気になれなかった。そのおかげで、今は眠気が半端ない。ゆえに、かなり愛想のない返答だったはずなのに、彼女は機嫌よく自分に笑いかけた。


「あのね、エルバート先生からマカロンを貰ったの! 一緒に食べましょう!」


「お、そういうことなら付き合うぜ。湖のほとりで問題ねぇな」


「ええ!」


 大事そうに大量のマカロンの入った袋を抱えて笑うルルに、ラギもつられて笑む。


 ふたりで湖のほとりへ向かう間、小さな歩幅で懸命に後ろについてくる彼女が愛おしかった。


「……よし、食うぞ!」


「うんっ」


 マカロンの袋を広げて、ひとつ掴んで口に放り込む。横では、甘い味が口の中に広がったのか、頬を綻ばせる彼女がいる。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ