ワンドオブフォーチュンF

□闇より蘇りし叙情曲(カンツォーネ)
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 それから数日後の休日に、ルルの尽力により集まった総勢七名は、彼女の到着を待っていた。エストはそこに揃った個性の強い者たちを見て盛大にため息をつく。ついでに、瞳を輝かせる学者肌の少年に捕まった金髪の少年に憐憫の眼差しを向けて。


「ノエルはどう思う? ミルス・クレア内に楽器はないはずなのに、夕方の時刻に廊下を歩いていると聞こえてくる曲について! 僕が推測するに―――」


「分かるわけないだろう! というかそもそもそんなことがあってたまるか!」


 苛立ちながら応答するノエルに、ユリウスは質問の手を緩めない。それを宥めるように、ビラールが仲裁に入る。


「ふたりとも、落ち着いて。ルルが来ていないのに、気持ちが先走っていマス」


 その光景を見ながら、楽しげな調子でアルバロはエドガーに声を掛ける。


「ちなみに、どうしてエドガーくんはルルちゃんの誘いに乗ったのさ?」


「ミルス・クレアの不思議なんて、記事にすればきっと面白いと思ってね!」


 きらきらと瞳を輝かせるエドガーを見て、続けて宥めに入ったビラールまでも巻き込んで今回の不思議について興奮しながら話し続けるユリウスを見てから、げんなりした顔でラギがぼそりと呟いた言葉に、エストは心から同意した。


「……おい、こんなまとまりのねぇ連中で、その調査できるのかよ」


「……奇遇ですね。僕もそれが不安です」


 それから暫くしてルルがやってくるまで、ラギとエストはただ沈黙を守り続けていたとか。
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