薄桜鬼
□薄紅の桜に君を重ねて
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はらはらと、降り落ちる桜雪に手を伸ばし、総司はその手に一粒の欠片を手にした。艶やかでもなく、香りもない花なのに、こんなにも愛でたくなる。何故だろう―――以前考えていた理由は、見つけてしまえば何気ないものだった。
「総司さん」
「千鶴」
振り返ればそこに少女はいる。特に着飾っている訳でもないのに、こんなにも自分を惹きつける―――。
桜の花は魔性の花。―――何故なら、僕の愛しい人と雰囲気が、とても良く似ているから。
「今日はどうしたの? 日向ぼっこするにはまだ陽は高くないよ?」
「………少し、付き合って欲しいところがあるんですが…」
「構わないよ。……で、どこに付き合って欲しいの?」
悪戯を思いついた子どものように総司の瞳は楽しげで、千鶴はそんな総司を見上げながら、小さく言葉を放った。