薄桜鬼
□薄紅の桜に君を重ねて
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「千鶴姉ちゃんは俺がお嫁さんにするんだっ!」
ひくりと、総司の頬が引き攣った。そんな彼を見て、千鶴はしまった、とでもいうように苦虫を数十匹は噛み潰した顔で、哀れな目に遭わされるであろう少年を見下ろす。
「お前、千鶴姉ちゃんがいつも大変な思いをしてるときに、寝てばっかりじゃんか! いつも、父ちゃんや母ちゃんが、お前が寝ている間に来る千鶴姉ちゃんと家まで食材運んでいくの見てるぞ!!」
それは違う、と千鶴は言いたい。
彼の身体は病に蝕まれている。故にあまり無理をさせるのは気が憚られ、どんなときでも彼の身体を優先させたのだ。―――望めばきっと手伝ってくれただろうこともわかってはいるけれど。
だが、流石に今日は村人の大半は村の行事で出払っている。故に、いつものように助けてもらうことも出来ず、気が進まなかったが、今日の夕食に使う材料を運ぶために、彼の力を助けとしようと思っただけであって。
「……いつも、他の人に助けてもらってたの?」
「いえ、あの…総司さんの身体に、負担がかかったら困るので…」
上手く取り繕うことさえ叶わず、千鶴は胸のうちで涙する。笑顔だが、目の前の彼は完璧に怒っている。