S.Y.K
□たったひとつ、願うなら
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ゆらゆらと、炎が揺れる。
悟空はひとり、皆が寝静まった後も机に向き合って薬の調合に勤しんでいた。
「………あー…ねみぃ」
くあっと欠伸をして、悟空は背筋を伸ばして寝静まる子どもたちの部屋のある方向を一瞥した後、静かに立ち上がった。
自室から出て、向かう場所はもちろん、誰よりも大切な、彼女のもと。
「……おい、平気か?」
部屋の主の許可もなく、ずかずかと入り込むのは本来生真面目な彼女からすれば、説教ものなのだが、今回は事情が事情なので、玄奘は近づいてくる悟空の顔を見上げた。
「………ったく、毎日毎日働きすぎなんだよ。たまには息抜きしなきゃ、こうなることは目に見えてたろ」
呆れ顔で調合した薬を飲ませるために、悟空は傍に在った水差しを手に取る。漸う起き上がった玄奘に、そっと薬を差し出す。
「…ほら。折角作ったんだから、ちゃんと飲めよ」
「…はい」
素直に薬を受け取って、玄奘は悟空の作りたての薬を口の中へと含んだ。