薄桜鬼

□香涼に映えし気高き花
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 なんて愚鈍なのだ、己は。―――大切な、特別なひとの身体の不調など、普段から見ていれば分かりそうなものを。 悔やむ平助の目には、汗を額に滲ませる千鶴の姿が見える。


 病人の看病など、した事は無い。見舞いといったものと違って、やはり重労働だ。


「……水桶と、手拭と……あと、布団も何枚か…」


 女の千鶴が、新撰組にいた頃からずっと、幹部の誰かが体調を崩すたびに、こうして介抱をしてくれていた。…いざ自分がやってみると、女手ひとつで、必死に自分達を気遣ってくれたのかと、何故か泣けてくる。


 ようやく一連のものを取り揃えて、平助は千鶴の許へと急いだ。


 少し熱い吐息を零しながらも、静かに瞳を閉ざした少女が寝ていることを確認して、平助は安堵する。世話を手早くしなければと気が逸ってどたばたして、かなり音を立てていたから、彼女がその状況で寝れなかったのではと、此処に赴く途中に急に思い立ったから尚更に。


 手ぬぐいを水桶に突っ込み、ぎゅっと絞ってから彼女の額へと乗せた。苦しそうな表情が、微かに和らぐ。
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