ワンドオブフォーチュンF
□If you disappeared
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「……大丈夫、わたしはいなくなったりしないわ!」
「……どうして、そんなことがいえるんです」
「当然よ、エストがいるもの!」
「………僕の力が及ばないかもしれないとか、考えないんですか」
「思わないわ、エストは凄いもの! だから、わたしのことはちゃんとエストが守ってくれるでしょう?」
にっこりと断言されてしまえば、エストは悩んでいた自分が馬鹿みたいだと笑うしかない。
たしかに、あの組織は僕を完璧にしようと思うあまり、僕に多くの力を与えてしまった。力で言えば、確かに自分は彼女を守れるくらいには強いのかもしれない。
「ね? 『もしも』なんて絶対ないわ! わたしもエストと一緒にいたいから頑張るし、エストだって、わたしのこと守ってくれるでしょう?」
「……そうですね…そうかも、しれません」
ほら、大丈夫だと。そう言って、君は笑う。
だが、エストは笑いながらも考える。
―――もし、あなたが僕の前から消えてしまったのなら。僕はきっと―――…。
「…帰りましょう。悩みもすっきりしましたから」
「そうね、もうすぐ夕食の時間だもの!」
手を繋いで、日が暮れ始めた景色の中をふたりは歩く。
長く伸びた影を背にしながら、エストは振り仰ぐ。
そうして、声には出来ない言葉を、形にする。
―――僕はきっと、この世界を呪って死ぬと思う。
あとがき