ワンドオブフォーチュンF
□If you disappeared
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「エスト!」
見つけた恋人の姿に表情を明るくさせたルルは、彼の名を大声で呼んで思い切り抱きついた。
「う、わっ!」
振り返った途端胸の辺りにやってきた衝撃と共に、エストの視界は空転する。
このまま頭にやってくる衝撃をやり過ごすしかなくなって、エストはぎゅっと目を瞑る。―――だが、いつまでも衝撃はやってこない。
おそるおそるといった体で瞳を開けた途端、見えた銀髪を見てようやく得心がいく。
「―――ありがとうございます、ビラール」
「イエ。怪我が無くて、ヨカッタ」
にこにこと笑いながら、ふたりの体を支えていたビラールは、体勢を立て直すエストを見てようやくエストの腰から手を離す。
「ルル。今は大丈夫デシタガ、今のは少し、危なカッタ」
「…ご、ごめんなさい」
素直に頭をさげて項垂れるルルに、エストはため息をつく。
「…反省してるなら僕が再度言う必要はありませんね」
そうして踵を返し、エストはルルを置いてすたすたと先へ行く。
「……ま、待って、エスト!」
遠くなっていくふたりの姿が人が少なくなってきてからようやく手が繋がった様子を見て、ビラールは笑った。
「仲が良くて、何よりデス」