ワンドオブフォーチュンF
□Please strongly clench a hand before I injure you.
1ページ/7ページ
何故、離れたというのにこちらに近づいてくるんだ。
心の中でうごめく感情が、だんだんと黒に染まっていくことをおそれて、彼女と離れた。
だというのに、どうしてここまで彼女は自分の期待する行動を示してくれないのか。
「…どうして、と問うのは馬鹿を見るだけですね」
口腔にこもるようなほど小さな声でこぼし、こちらの世界へきても穏やかに笑う少女の姿に安堵する。
それでも、エストは考える。自分ほど存在自体がありえないものはない。だから、誰よりも大切な彼女が、僕から離れて、せめて穏やかで変哲もない、自身がなによりも憧れる、本当の幸せの日々を送れるように。
………そう考えて、彼女を遠ざけたと、いうのに。