薄桜鬼
□君への想いを捧ぐ代わりに贈る
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それから少し経った頃だ。
「千鶴ちゃん、此間寝る前に大切そうに簪を持っていたんだけど、あれなんなんだろうね」
微笑みながら淡々と口にした総司の言葉に、三人組は即座に食いつく。
「………一体、誰の贈り物だ?」
「俺じゃないって。千鶴には金平糖とか菓子ばっかやってるし」
真っ先にふるふると首を振って異を唱えた平助だが、それでも好いた女が大切にしている簪の贈り主が誰なのかは気になるらしい。
「俺でもねぇな。千鶴ちゃんに気の効いたもん贈ったことねぇし」
「新八なんかが女に気の聞いたモン贈れるなんてこと、誰も思っちゃいねぇよ」
左之助が呆れたような顔で新八を見据え、続けて俺でもないと否定の言葉を口にする。
「僕でもないよ。………てことは、土方さんかなぁ?」
その言葉に軽い殺意を覚えて、仲良し三人組は後ずさる。
「………そのくらいにしておけ。余計な詮索するくらいなら、本人に聞いたらどうだ」
傍らでじっとしていた一が、静かに総司を言葉で制す。一瞬だけむっとしたような顔を浮かべるものの、すぐに笑みを浮かべて一にといかける。
「一君はどうなのさ? 簪のこと、知っているの? 知ってないの?」
「……………知らん」
長い間を空けて、一は静かに立ち上がる。そのまま去っていく彼の姿を見つめながら、総司は笑った。
「一君で、決まりだね」
少しだけ悔しそうに顔を歪めた三人組が、千鶴と彼の仲を知る日は遠くない。
あとがき