薄桜鬼

□君への想いを捧ぐ代わりに贈る
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「嬢ちゃん、これはどうだい?」


 桜細工を散らせた簪を千鶴の手に乗せ、男は朗らかに笑う。


「えっと…もう少し値段の安いものはありませんか? お金はあまり持ち合わせていないから…」


 買えない、と少し残念そうな表情で言おうとした千鶴を、一は手で制した。驚いてこちらを見る千鶴を一瞥してから、一は静かに言い放つ。


「………もう少し高めのを見せてもらいたい。こいつに似合うものを」


「はいよ」


 気前のいい恋仲がいて良かったねー、とぽんと千鶴の肩を叩き、奥に引っ込んでいく男の背を赤面で見つめ、鈍い動きで一を振り返った千鶴と眼が合う。


「あの…私なんかに高価なものを買ったら駄目です、もっと自分のために使わなくちゃ………」


「気にするな。俺の勝手だ」


「でも…」


「気に入らないのなら捨てろ」


 戻ってきた簪売りの男の手の中にあった簪の中から一本の簪をとり、懐の金を一掴み渡す。


 ぽんと掌に乗せられた簪に戸惑いつつも、千鶴は微笑んだ。


「………ありがとうございます、斉藤さん」
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