薄桜鬼
□君への想いを捧ぐ代わりに贈る
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そうして迎えに来た時点で、千鶴の着物姿に―――元から可愛いとは承知していたが流石にびっくりした―――唖然として足を止め、それに気付いた千鶴が変ではないかとたずねてきたのだ、確か。
そこまで思い至ると、一は呼吸を整え、千鶴をもう一度じっくりと観察する。
両頬にあたる辺りの髪を少量とって三つ編みにし、それを後ろに回して紐で二つのそれを縛り上げている。緩やかな曲線を描いた三つ編みが長い髪を纏めるように囲んでいる。
白椿と赤椿を桃色の布に描きいれて、色合いを美しく引き立てたその着物から覗く白くきめ細かい肌をひきたてている。
―――可愛い。
一言思い当たる言葉を口に仕掛け、それをぐっと堪える。素直に言うべきなのだろうが、普段口にしない言葉なので照れ臭い。
「………その格好、似合っている」
漸う口にした言葉は気の利いた感じがしない。軽く自己嫌悪に陥る一の耳朶に、嬉しそうな声が入り込んだ。
「本当ですか? よかったぁ…褒めてもらえて」「………」
―――可愛すぎる。
寸前まで出掛かる言葉を必死に食い止め、飲み干し、幾度か息をして、振り返る。
「………行くぞ」
「はいっ」
―――自分を保ったまま一日過ごせるだろうか。
少し不安になるが、それでも彼女が自分を選んでくれたのは素直に嬉しかった。