S.Y.K
□幸多かれと夢に祈ぐ
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「ほら、これなんか蘭花さまの御髪につけると、とても映えそうではありませんか!」
「そ、そうですね…」
ここで否定や疑問を口にしたら、何故かいけないような気がして、玄奘は大人しく従順に頷く。
「でも、三蔵法師はお付けになりませんの? 一応そのような格好をしていても、女なのですから、この程度のものは嗜みではなくて?」
「で、ですが旅の道中は邪魔になりますし……」
なにより、壊してしまったらと思うと、手許に置いておけない。
「全く。質素な身なりなのだから少し着飾ればいいんですのよ。素材は蘭花さまほどではありませんけれど、間違いなく良いほうなのですし…」
「そうですねぇ。きっと、着飾れば綺麗になると思いますよ〜」
金閣の意見に同調する銀閣が、思いついたように金閣に提案する。
「そうだ、姉様。どれかひとつ、差し上げたらどうでしょう」
「え……そ、そんな、いただく訳には…」
「以前、蘭花様を助けた恩義もありますし、これくらいならなんてことないですよ〜」
にこやかにそう言って、促す銀閣に流されるように、金閣がどれがいいか物色し始めた。