S.Y.K
□幸多かれと夢に祈ぐ
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「こうしてる場合じゃありませんでしたわ! 三蔵法師、後で会いに来ますから、少々失礼いたしますわよ!」
「わわ、姉様、待ってくださいってば〜」
騒がしく下を駆け抜けていったふたつの姿に、思わず玄奘は苦笑しながら窓を離れた。
「……相変わらずのようで、なによりです」
「うん」
彼らと話すと、なんだか楽しくなってしまうのだから、不思議だ。さきほどのどこか暗い雰囲気が、疾走していたふたりとの邂逅のおかげで穏やかになっているのに、玄奘は安堵した―――…。
「間に合って本当に良かったですわ」
「ですねぇ」
目の前で腰を落ち着けて和やかに談笑する妖怪の姉弟を見やり、ついでその目の前に置かれたそれに玄奘は視線を落とす。
「……随分とたくさん買ったのですね…金閣がおつけになるのですか?」
「何を仰いますの! 蘭花様のために買ってきた髪飾りですわっ」
拳を握って熱く力説しはじめた金閣に、思わず玄奘は身を仰け反らせる。