S.Y.K

□幸多かれと夢に祈ぐ
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「―――お師匠様?」


「は、はい。……そうですね。この時間帯からまた改めて宿を探すのは骨が折れそうです。…それで構いませんよ」


「わかった」


 そうして彼と部屋に入って、すぐさま旅の疲れでよろめいた玄奘を、玉龍は慌てて支える。


「っ、お師匠様!」


「だ、大丈夫です。気疲れした、だけですから……」


 微笑んで見せたが、玉龍は納得しなかった。


瞳を曇らせ、気付けなかった自分を呪うように、悔しげに唇を噛み締めている。


「ごめん。……気付けなくて」


「……いいのですよ。私は、気にしてません。―――肩を、貸してくれますか?」


「うん」


 そうして、玉龍に助けられて、漸く寝台の元へと腰を下ろした玄奘は、そっと身体を横たわらせる。横転した視界に、不安に揺れる翡翠の宝玉を捕らえる。


 手を伸ばして、その白い肌に触れた。子供のように怯えるその表情を、見つめる。


「……こんな身体の不調くらいで、死んだりはしません。……あなたを、一人きりには、しないから」


「………ん」


 彼は、五百年の月日を孤独に過ごした記憶で、一人になるのに怯えている。だからこそ、身体には気を遣っていたつもりだったのだが。
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