ワンドオブフォーチュンF

□キミの耳元で睦言を囁き
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「…ルル、起きてください。体を冷やしますよ」


「……ん…」


 ぼんやりと、焦点の合いきらない瞳が開き、エストのほうへ向けられる。


「ルル。しっかりしてください。もうすぐ夕食です、食べ損ねてしまいますよ」


 そう呼びかけて、「んー…」と曖昧な言葉がルルの唇から漏れる。遅れて、ルルはふわりと笑った。


「えへへ…エスト、大好き」


 虚を突かれ、知らず顔に熱が集まるのも止められず、エストは息を呑む。愛らしい顔が、どうしようもなくいとおしい。


 やがて、前倒れになったルルを支えようとし、エストはルルの体に下敷きにされた。本気でため息をつきたくなったが、眠る彼女を起こそうと試みることは、先ほどの寝言を聞いたからか、やる気を失った。


 ―――あと、もう少しだけ。ほんの少しだけでいいから。


「……僕も、あなたが好きですよ。ルル」 


彼女の寝顔を、独占したい。









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