薄桜鬼
□今日という日に負けない様に
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昨日、今日、明日、明後日―――
そうして過ぎていく時間の中で、君への思いは潰えるどころかさらに大きくなって僕の胸中に広がってく。
はらはらと、雫が宙から舞い落ちてくる。だが、空は酷く明るい。―――通り雨、か。
そう判じて、総司はどうやって帰ろうかと思いながら空を仰ぐ。そのとき、ふと背後から降りかかった声に、総司は目を瞬いた。
「沖田先輩、どうかしたんですか?」
酷く柔らかな声音が、自らを呼ぶ。振り返り、そこにいるのが愛しい少女の姿だと視界が認めた途端、湧き上がった疑問が口を突く。
「あれ? 千鶴ちゃん、帰ったんじゃなかったの? 教室に行ったら鞄がなかったから、てっきりそう思ってたんだけど」
「いえ、職員室のほうに用事があって……少しだけ、土方先生と話してきたんです」
「……へぇ、そうなんだ」
そう言って笑う彼女に笑いかけながら、総司は右肩に持ち手を引っ掛けた鞄に添えた右手に、僅かな力を加える。
―――気に入らない。
胸中でそんな言葉が駆け抜けるのを自覚する総司の傍らに、千鶴は歩みを進めて寄ってきた。