水色シグナル

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01.わたしに振り向いて



「×××!見るアル。新入生アルヨ」


『ほんとだ。新入生は今から入学式なんだね。1年の頃を思い出すな〜』


「何言ってるの、×××ちゃん。×××ちゃんは1年生の頃から身長も見た目も変わってないじゃない」


『ちょ、ひどっ!!妙ちゃんひど!!』



1年から仲良しの妙ちゃんと神楽ちゃんといつもみたいにケラケラ笑いながらクラス発表の中庭へと向かう。


今日からわたし達も3年生。

この二年間、わたしは坂田銀八先生が担任を務めるZ組だった。

Z組は銀魂高校の中で(ある意味)特別で、何故だかメンバーの大半は変わらなかった。
しかもZ組は例えるなら動物園みたいなクラス。

ゴリラだったりマヨラーだったり、長髪だったり…

とにかく個性溢れるクラスだったけれど皆いい人達ばっかりで毎日が楽しかった。

だから今年もまた同じメンバーが揃えばいいのに…なんて思ったりする。



『あっ!』


「どうしたの?」


『見てあそこ、総悟!』


「あ゙ん!?」



隣で神楽ちゃんが「殺す」とか「糞サド」とか言ってるけど、そんなの気にしない。
だっていつもの事だから。

わたしの目は総悟を見付けると、そこから離れなくなるんだ。

わたし達より離れた先を近藤くんとトシと歩く総悟。

歩く度に揺れるサラサラの栗色の髪とか、トシをからかう時のS顔とか、ダルそうにポケットに両手を突っ込んで歩く癖とか。

総悟の全部が好き。大好き。



「×××ちゃんったら…ほんとに沖田さんが好きなのね」


『へへっ、大好きっ』


「わからないネ。あいつのどこがいいアルか?」


『んー、全部?』



わたしのアバウトな答えに神楽ちゃんが「私からしたら全部が嫌な奴ネ」なんて言うけど、全然違うんだよ。

総悟は嫌な奴なんかじゃない。



「×××ちゃん、あなた自覚ないみたいだけど私達の学年の中で指三本に入る可愛い子だって、ずっと有名なのよ?」


『ハァァ!?ないないっ 嘘だ!』



そんな事あるわけがない。

もうエイプリルフールは過ぎてるぜ、妙ちゃんよォ。



「嘘じゃないネ。私、こないだ他のクラスの男共が×××見ながらにコソコソ言ってたの聞いたアル。やらしい目で見てたみたいだったからシバいてやったヨ」


『……それ勘違いだったらヤバくね?』


「…ゴホン。まぁ…ほらね?ちなみに男子で人気なのは、やっぱり土方さんと沖田さん、それから…あまり見掛けた事ないけど高杉なんかも人気みたいよ」


『ふーん』


「ふーん、じゃないヨ!サドに×××は勿体ないネ!!大体×××は――…って×××、聞いてるアルか!?」


『聞いてないっすね〜×××、行ってきまスーパーロボット大戦!』


「あっ…×××ちゃん!?」



後ろで妙ちゃんと神楽ちゃんの呼び止める声が聞こえたけど、気にしない。気にならない。

それほどわたしの目は総悟を追い掛ける事に必死なの。早く早くって急かされるように動くわたしの足。


もうすぐ、もうすぐ…!


人混みを掻き分けながら総悟に近付いていく。

相変わらず無表情でダルそうにしてるなぁ…その隣ではトシもかったるそうにしながら近藤くんと話してる。



わたしと総悟は大親友なんだって。

男も女も関係ない、何でも話せるたった一人の親友なんだってさ。


なんでって?
だって総悟がそう言ってたから。


…でも総悟は知らないんだよ。

わたしがそれ以上をどんなに願って、どんなに望んで隣にいるかだなんて。

隣にいるのに隣に並べない、そんな悔しさや切なさを噛み締めてるなんて総悟は知らないんだ。


親友という言葉に、どれだけわたしが胸を痛めてるか総悟は知らないでしょ?


 
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