→ぷりんす←

□ほおづえついて
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10月4日


例年通り氷帝学園で盛大に行われた跡部景吾の誕生日会。
その後もいつものようにテニス部レギュラーだけでの馬鹿騒ぎ。
全てが変わっていないように思えてしまうのに一人だけ上手く笑えていない君は。
この雰囲気から少しだけ浮いていて何処か上の空だった。


いつものカラオケボックスで
いつものメンバーと
いつものように騒いでいるだけなのに
いつも仕切りたがる君が
いつものように振舞ってくれないから
いつものように笑えなくて
いつもよりも場の空気はずっと冷めてしまっていて
いつも君に集まる視線が今日は何故か痛々い

これもみんな負けてしまったからだというの?

青春学園に・・・。

たったそれだけで?

僕らの絆って

そんな簡単に壊れてしまうものだったていうの?

「ふざけないでよ!!」
「ジロー?」
普段大人しくしてるから皆びっくりしたんでしょ?
僕はそんなにお人よしじゃない。
僕だってキレる時くらいあるよ。
誰だって目の前で壊れていく大切な人をただ見ているだけなんて出来ないでしょう?

「跡部ぇ。お願いだから笑ってよ」
「っ!!」
「跡部がそんな顔してると皆悲しいんだよ。何で分からないの?」
「俺は・・・」
「言いたい事あるなら、はっきり言いなよ。それが跡部だよ!!」
「それが・・・・・俺?」
「うん」
ジローの言葉に頷いた跡部は溜息混じりに重く閉ざされていた口を開いた。


「高等部でもう一度全国を目指したい」


「このメンバーで」


そう言う跡部は以前と同じく自信に満ち溢れた瞳をしていた。


「俺様について来い。全国に連れて行ってやる!!」


言いたい事を言い終わったのかソッポを向いてしまった跡部。
ほおづえをついた腕の隙間から見える零れた涙はとても綺麗だった。


僕らは忘れていたんだ

彼が僕らをテニス部に誘ってくれた最初の日に誓ってくれた事を。

でもちゃんと果たしてくれていたんだね。
僕らは当に忘れてしまっていたのに。
君だけは覚えていたんだね。
果たせていたじゃないか。
最初に誓った「「全国へ」」っていう夢。
ううん。今になっては、それが現実。
果たせているんだ。
だからこれからも君についていくんだ。
僕も皆も。
それが少しでも君の支えになればと願っているよ。

ずっと・・・・・ずっと


fin

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