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2015賀正SS[1/5]




アッシュフォード学園生徒会の長ミレイ・アッシュフォードの悪ノリには定評がある。
そして彼女によって振り撒かれる常識を度外視した災厄の種は、主として彼女とは正反対の思考回路を持つ人間の上で芽を出す。
無論、生真面目さが売りの副会長ルルーシュ・ランペルージは常よりの〈被害者〉の一員である。
新年を迎えて最初の登校日である今日とて、彼は早速と言わんばかりのミレイの猛襲によってこめかみを痛めていた。

「……何ですか、この状況は」

年初めの会議と聞いて、早起きをしてやって来たのだが、目前に広がる光景は明らかにそういった類の物とは一線を画していた。
リヴァル・カルデモンドは血色の良い顔を黒インクの落書きでぐちゃぐちゃにしている。
シャーリー・フェネットは床にクッションを置いて座り込んでいる。
カレン・シュタットフェルトは緑色の布に包まり、赤い怪物のような被り物を抱えて憮然としている。
ニーナ・アインシュタインは果物ナイフでせっせとオレンジを剥いている。
一種異様な空気に包まれた生徒会室にあって、際立って面妖な姿をさらけ出していたのは――枢木スザクであった。

「やあ、おはようルルーシュ。あけましておめでとう」

相変わらずの爽やかな笑顔で新年の挨拶をされるも、ルルーシュはそれに何をも返すことができない。
ただただ、幼馴染の頭の天辺から爪先までを、じっとりと眺めることしかできなかった。

「……お前、何だそれは」
「ヒツジのフード付きブランケットだよ。可愛いでしょ」

自慢げに笑うスザクは、やけにサイズの大きい白のブランケットを頭から被っていた。
もこもこと雲のように膨らんだ質感と、フードらしき部分に付属した小さな〈耳〉と〈ツノ〉の形状を見るに、確かにヒツジらしき雰囲気はある。――あるが、それがどうしたというのか。

「今年はヒツジの年なんですって」

困惑して言葉を失っていたルルーシュにそう助け舟を出したのは、間違いなくこの状況を創り出した張本人であろうミレイだ。

「日本での年の数え方らしいわよ。何て言ったかしら、ネズミから始まって、次がウシで」
「……十二支ですか」
「そう、それ。面白いわよね、動物で年数えるなんて」

嬉々として語るミレイからルルーシュが嫌な空気を察するのは光よりも早かった。

「……『せっかくエリア11にいるんだから日本流に新年を祝おうと思って』とか言いませんよね」
「流石ルルーシュ、話が早いわね。これは我が生徒会流の〈オショウガツ〉よ」

ふぅっと意識を一瞬遠のかせたルルーシュは、懸命にそこへ踏み留まり、思い切りスザクを振り返った。
これでもかというくらいの勢いで睨み付けたのだが、当のスザクはぽやんと微笑んでいるだけで、とかく焦燥感を表層に上げるようなこともしなかった。

「会長さんが『日本のお正月のイメージを教えて』って言うから、僕なりに思いつくものをキーワードで挙げてみたんだ。それをくじ引き形式にして、引いた人が再現するってゲームだったんだけど――それぞれブリタニア人の感性で解釈されちゃって、微妙におかしなことになっちゃったんだよね」

その上このようにご丁寧な説明まで成され、ルルーシュはいよいよがっくりと肩を落とすしかなくなった。
余計なことを教えるな、等と怒鳴る気力はもう残っていない。


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