ボロキレノベル

□勝てない
1ページ/1ページ



「よっと」


スザクの軽い掛け声と共に、俺の拳はグシャリと机へ叩き付けられた。
手の甲と肘に鈍い痛みが奔る。
これで何度目だ?

「12勝0敗、さすがに軍人はスゲェな」

隣でリヴァルが笑う。
嗚呼なんと耳障りな。
詰まる所、俺の戦績は0勝12敗という訳か。

「そんなことないよ」

というかお前、そうだお前だ枢木スザク。空気を呼んで1回くらい手を抜いてくれてもいいんじゃないか。0勝というのはあまりにも情けなさ過ぎる。軍人なんだから上司の「ヨイショ」の仕方なんて腐るほど知っているだろうに。いや、俺はお前の上司ではないし「ヨイショ」してもらっても何の得もさせてやれない事くらい解ってる。だが、やはり名誉の尊重はしてもらいたいものだ。なぁスザク。

「相変わらずだね」

苦笑いするな、どうせ小さい頃から変わらないよ。それを言うなら、お前は随分と変わってしまったじゃないか。以前はこんなに他人本位ではなかったのに。否、この状況だけを見ていると、大して変わっていないのかもしれない。だってお前は相変わらずの負けず嫌いだ。信念は決して曲げない、とでも言った方が良いだろうか?なんにせよ、穏やかな顔しているくせに、全くいけ好かない男だよ。なぁスザク。

「もう1回する?」

おい、すぐさま頷いた俺を見て笑うな。俺だって負けたままではいられない。名誉毀損で訴えるぞ。悔しいと思ってはいけないか?俺はいつだってこの手のゲームでお前を越えられないんだ。数年越しのトラウマなんだぞ、この体力バカが。マインドゲームでは絶対に負けないのに。くそ、今度こそ。俺の手を潰さないように、なんて密かに力を抜いているその手に本気を出させてやる。包むみたいに、くすぐったいほど優しく握ってくるその手に。なぁスザク。


「ほらルルーシュ、手」


握手をして、肘を机に突いて、中腰になって。
お前は知らないんだ。こんなゲームの準備なんかにも俺が心躍らせていることを。手をつなぐ口実に使ってしまっていることを。否、知られていたらそれはそれで途轍もなく情けなく恥辱極まりない話だが。鈍感でよかった、天然でよかった。でももう少し弱かったらもっとよかった。弱かったらお前は軍人にはなれず、この学校にも来られなかった訳だけれど。嗚呼やはり、お前が強いからお前は此処に居て、こうして手をつなげて、お前に負けて悔しいとか思えるんだろうな。
なぁ
スザク。


「じゃ、よーい」



それでも一度は勝ってみたいよ。
お前との腕相撲に。





【END】


←ノベルtop
←Main
←ボロキレ


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ