ボロキレノベル

□夏の終わりに
3ページ/16ページ



「まじかよルルーシュ!!」
「ああ、だから自分でやれ」
「勿論ですとも!やったー助かった!」
無論リヴァルは大喜びだ。今の彼にとっては正に天の助けだったのだろう。
リヴァルだけでなく、その場にいた全員がルルーシュを振り向いた。それぞれの目は期待に輝いている。
「あ、あのールル…」
遠慮がちに最初に手を上げたのはシャーリーだった。
顔を上げたルルーシュに、彼女は言い難そうに「私も…」なんて告げる。
「数学わかんなくて、その」
「ああ構わないよ、シャーリーも一緒にやろう」
「あっありがとう!」
見る見る明るくなっていく彼女の表情。ルルーシュ以外にはその好意は筒抜けになっている。
ミレイがくすくす笑っていたのが何よりの証拠だ。
「ルルーシュ君、私もいいかな」
続いて珍しい人間が手を上げた。ニーナだ。
「古文で解らない問題があって、教えて欲しいの…」
「古文って…ああラテン語の読解問題か。いいよ俺終わってるから」
「ありがとう、助かる…」


よし、とリヴァルが一声上げて挙手した。
「今晩はルルーシュの部屋にお泊り!勉強合宿しようぜ!」
シャーリーが張り切って「賛成!」と挙手。ニーナも微笑む。話に関係のないミレイまで「私も行く」と盛り上がっていた。
勝手に話を進められて渋い顔をしていたルルーシュも、リヴァルのゴリ押しに負けたのか、最後にはゆっくり頷いた。一同は大喜びだ。
「いいわねぇこういうの、夏休みって感じ」
ミレイの一言。

それがチクリとスザクの胸を刺した。


(…誘うタイミング逃したかな)
仕方ないか、と肩を竦めて、再びその視線は窓の外へ放られる。
空気が一変し盛り上がりを極める生徒会室の中で、スザクだけがただ呆然と窓に寄りかかっていた。




◇ ◇ ◇ ◇




部屋を片付けてくる、となんだか慌てて退出してしまったルルーシュを除く一同は、尚も生徒会室で和気藹々と話し込んでいた。
やはりスザクは窓際でぼんやりしているだけ。それを呼び寄せる者もいなかった。
それは彼らなりの「疲れてるだろうからそっとしておいてやろう」という気遣い。スザクもそれが解っているから、特に何かを感じるでもなかった。
ただ、暑そうだなぁと外を眺めるだけだった。


「ルルーシュの部屋に皆で泊まるなんて、初めてだよなぁ」
リヴァルの楽しげな声が響く。彼の頭からは『課題』の二文字が消え失せてしまっている様な印象を受ける。
脳内構造が似通っているのか、シャーリーも嬉しそうに頷いていた。
スザクはそれを窓際から横目で眺める。
「私は行くのも初めて!今まで一緒に出かけてもそういうことなかったもん」
「何シャーリー、あんたルルーシュとデートしたの!?やったじゃん!」
ミレイがシャーリーの発言に食いついた。至極楽しそうに。
まさか、と苦笑いで手を振るシャーリー。其処には少し残念そうな色も篭っている。

「ナナちゃんも一緒です、この間3人で買い物行って…」
「買い物なんて色気無いわね、プールくらい行きなさいよ」
「プールなら俺、ルルーシュと2人で行きましたよー7月に」
リヴァルが手を上げる。ミレイは「アンタはどうでもいいわよ」なんてそれを退けた。
男2人でプールという奇怪な状況を悉く批判されたリヴァルは、少ししゅんとしてしまっていた。
「私は、この間ナナリーちゃんと図書館へ行ってきました…」
ニーナ活動的じゃん!とミレイが彼女の頭を撫でる。

「何だ、みんな結構ルルーシュ兄妹と遊んでんのね。ちょっと残念」
ミレイは一同を見回して悪戯にそう笑った。
無論、そんな彼女の思わせぶりな発言に飛びついてきたのは、シャーリーである。
「なんですか会長それ!ルルを独り占めにしようとでも…っ」
「うふふその通り、この間なんか2人でうちに泊まりに来たもんねー」
「えぇぇぇぇ!!」
その悲鳴はシャーリーと、同時にリヴァルからも上がった。
ルルーシュに思いを寄せるシャーリーをからかおうとの魂胆だった様だが、それは同時にリヴァルへも動揺を与えてしまったらしい。
予想外の反応にミレイが引いていた。
「かか会長!それでその、ルルーシュとは何もありませんでしたか!大丈夫ですか!?」
「何の心配してんのよリヴァル、あんた面白いわねー」
「よかった…何もなかったのか…」
心底ホッとした様な様子で胸を撫で下ろすリヴァルを見て、シャーリーが苦笑いを浮かべていた。
彼女も安心したのは一緒だろう。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ