ボロキレノベル

□夏の終わりに
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もうお解かりであろう。
今日のルルーシュ皇子の出張先は、クロヴィスランドに新しく設立された大プールであった。
クロヴィスランドは、美術や建築に興味のある彼が設計を担当したエリア11内の娯楽施設。
であるから、総督のコーネリア、副総督のユーフェミア、そしてその代理であるルルーシュが、完成式典に招かれているのだった。
その皇族の背後にひとりずつ構えているのが、護衛の面々。ルルーシュの後ろにも当然それが存在した。
あの2人はこの席を争っていた訳であるが。


「殿下、肌の方は痛みませんか?」
背後の護衛に声を掛けられ、ルルーシュは「日焼け止め塗ったから。ありがとう」と声を返す。
心配そうな表情であった護衛――ヴィレッタ・ヌウは、その言葉に心底安心した様に微笑んだ。

「しかし殿下、ジェレミア卿と枢木が来たがっていたのですよね、私めが来てもよろしかったのでしょうか」
ヴィレッタはそう零すが、彼女を指名したのはルルーシュ当人である。皇子は首を振った。
「寧ろどちらかをつれてきた方がややこしい事になる。お前が来てくれて助かった」
「いえ、私は殿下をお護りできればそれでいいのですが」
彼女はきっと、出来の悪い上司と部下が心配でならないのだろう。
その気持ちは解らなくもなかった。
だから「心配ない」と微笑んでやる。


「私てっきりスザクが来るものだと思ってました」
ユーフェミアは物珍しそうにそう語る。
恐らくそれは彼女以外の人間も考えていたことだ。実際ルルーシュにはいつもスザクがくっついているし。
無論、ルルーシュが彼をつれてこなかったのには、訳があるのだ。
「あいつ、絶賛夏風邪中なんだよ」
「あらま」
「軽いやつだけどな」
軽いとは言え風邪引きをこんな涼しい格好でプールサイドに立たせる訳にはいかない。だから今回は休めと言った。
なのに着いて来ると聞かないから。最初はジェレミアに頼んだのに、2人であれが始まったからどうしようもない。
だから最終措置としてヴィレッタを指名したのだ。
全く、骨の折れる護衛隊である。

それほど想ってくれているのは、正直嬉しいのだけれど。



「それで、2人は今どうしているんです?総督府でいじけ中?」
くすくすと可笑しそうに笑いながらのユーフェミアの問い。
椅子の肘掛に頬杖を突きながら、ルルーシュも笑った。


「今頃、2人で仲良く総督府の庭の草むしり中だよ」


騒いだ罰としては軽すぎるくらいだが、まあ勘弁してやる。
帰りにジュースでも買ってってやるかな、なんて考えながら、かんかん照りの太陽を見上げた。




【END】


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