ボロキレノベル

□夏の終わりに
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「私が御供をする!」
「いいえ僕が!!」




夏の終わりに
my tough rival





8月28日。
そろそろ夏も終わろうというこの日、総督府内「暑苦しい男ランキング」があるならば1位2位を争うであろう2人が、これもまた暑苦しく言い争いをしていた。
夏が苦手な第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下は、ペンを片手に渋い顔をする。執務用のデスクへ頬杖をつきながら。
「もう、どっちでもいいから…」
そんな皇子の呟きが聞こえるや否や、2人の男はぐるりと勢い良く振り返ってきた。
余りの勢い凄まじさに、皇子はペンを取り落とす。

「よくはありません!!」

2人の声が重なった。
その声量はさることながら、つばが飛んできそうなその激しさに、皇子は思わず耳を塞ぐ。
「ここはやはり側近護衛の自分が御供をすべき場所であります殿下!是非この自分に、護衛の任をお与え下さいませ!」
そう息も荒らげに叫ぶのは、ルルーシュからの信頼も厚い側近護衛の一等兵・枢木スザク。
「いいえ殿下!出張時の少数護衛という重責に耐え得るのは、殿下の護衛隊長であるこの私めを差し置いて他にはありません!」
そう熱っぽく語るのは、ルルーシュ殿下命、と普段から叫びまくっているいい大人、護衛隊長の将校ジェレミア・ゴッドバルト。

正直やかましい彼ら、どちらがルルーシュの御供をするかで、この1時間ずっとこの調子で喧嘩をしていた。

「だから俺はどっちでもいいって言ってるだろう、ジャンケンでも何でもいいから早く決めてくれないか」
「いけません殿下、殿下のお命をお守りするというこの重任、ジャンケンなどで決めてしまっては!」
「その通り、だからお前が引け枢木!」
「これだけは譲れませんジェレミア卿!」
先程から何かと妥協策を提案するも、それでは駄目だと却下されっ放しだ。
あと10分程したら出発しなければならないのに。
ぶっちゃけいい加減にして欲しい。うるさいし熱いし堪らない。
「どうするんだ結局…」
はあ、と漏れる溜息。


するとスザクが「そうだ!」と力んで拳を握った。
「殿下がどちらかを決めればよいのです!お願いします殿下、任命を!」
「えぇぇー…?」
「枢木にしてはいい案だ!お願いします殿下!」
また面倒な役を押し付けられたものだ。というか、先程から何度も何度も、どちらでもいいと言っているのだが。
死んだ魚のような目で2人を見上げる。彼らの瞳はルルーシュとは対照的に期待に満ち溢れていた。
「さあ殿下、僕を!」
「私ですよね殿下!」
「さあ!」
「さあ!」
何と言う勢いだ。口元が引き攣ってしまう。
「う、ちょっ…」
待った、と両手を挙げても、熱血な彼らは聴く耳を持ってくれない。
それどころか、デスクに手を突いてズイズイと迫ってくるではないか。
「さあさあさあ!どちらです!」
熱気が凄い。迫力が凄い。
「殿下!」
熱い煩い
「殿下っ!」
熱い煩い熱い煩い熱い煩い熱い煩い熱い煩い熱い煩い熱い煩い熱い煩い熱い煩い


「あぁぁぁぁぁぁぁーっ黙れ黙れぇ!!」



◇ ◇ ◇ ◇ 



パチパチパチ、と拍手が響く。
その喝采を背に、上半身裸のクロヴィスが、演説台から降りて来た。
その隣に設けられた席で、薄手のYシャツを羽織っただけのルルーシュも、退屈そうに拍手をする。
「暑いですねー」
隣に座る水着姿のユーフェミアのそんな声に、うん、と一言ぼやいた。
更にその隣にいる、少々過激な水着を着たコーネリアに「私語は慎め」なんて咎められてしまった。


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