ボロキレノベル

□夏の終わりに
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「…質問を間違えたよ。君は今まで何をしてたの?」
「別に、休憩してただけだ」
嘘だね、と悪戯に響く、低めの甘ったるい声。
「シャツ全開で、そんな厭らしい顔でほっぺ赤くしちゃって」
「え、うわ!!」
それは私の所為だ。
それを告げられるはずも無く、C.C.はベッドの下で口を抑えている。
「もしかして…僕のこと待ちきれなくて、ひとりでお楽しみ中だった?」
「そんな訳ないだろう!いやらしいことを言うな!」
「さて、厭らしいのはどっちだろうね」
「やめ、こら…っ」


(…私がいるの、忘れてないだろうな)
ふう、と小さく息を吐く。このままお楽しみ時間になってしまえば、退出するのはほぼ無理だ。
半ば諦めかけて床に寝転んだその時。
ベッド脇から伸びてきた白い腕が、くいくいと、入口の方を指差したのだ。
それはルルーシュの手。そしてこれは恐らく例の「合図」だ。
しかしこの状況でどうやって入口まで行けと言うのだろう。

すると、ベッドの上でルルーシュが「なあ」なんて甘い声を出しているのが聞こえてきた。
「どうしたのルルーシュ…」
客人の酷く官能的な声。すっかりできあがってしまっている。
ルルーシュの声も負けず劣らず艶美であったが。
「俺もう我慢できない、服脱ぎたいから……目、閉じててくれないか」
「ああ、そんなことなら」
「いいって言うまであけるなよ、絶対だからな」
「解った解った」

数秒置いて。
また白い腕が伸びてきた。GO、の合図。
成程その手があったかと、C.C.はそっとベッドの下から出てきた。
ベッドにはルルーシュと例の彼。
ルルーシュは濡れたその瞳で、眉根を寄せながらC.C.を見ていた。
ニッと笑うC.C.。
(馬鹿なやつだ)
足音を立てぬようにそっと歩き、プシュっと音を立てて、ドアを開けた。
C.C.の背後で扉が閉まる。
室内からは「今誰かいた?」「猫だよ」なんて会話が聞こえてきた。




C.C.はそのまま、ナナリーがいるであろうダイニングへ向かって歩き出した。
自分の先程の行為を反芻しながら。


――私がお前を大人に


「…暑くて頭が沸いてしまったかな」
自嘲気味にそう笑って、強い日差しが溢れ返るクラブハウスの廊下を歩いた。




【END】


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