ボロキレノベル

□夏の終わりに
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8月20日。
そろそろ夏休みも終盤、計画性の無い学生らは課題に追われる時期だ。
ジワジワと蝉の鳴く中、始業式等の打ち合わせをすべく集まったアッシュフォード学園生徒会メンバー。
会議も終わり大方がのんびりする中で、お決まり人間リヴァルはニーナから課題のノートを借りていた。
ミレイはペットボトル片手に机で伸びているし、シャーリーはパンを齧りながら携帯を弄る。
ルルーシュは読書。
スザクは、

(夏休み終わっちゃうな…)

窓際で物憂げに外を見詰めていた。




夏の終わりに
jealousy




夏休みは長いようで短い。
それは小さな頃から感じてきたことであったし、この終盤の切なさはほぼ毎年感じること。
そろそろ慣れてもいいはずだのに、いつまで経ってもそんな気配は見えすらしなかった。
ユーフェミアの口ぞえも有って、課題は7月中に終わらせてしまっていた。
故に、軍務と生徒会の仕事以外に予定の無いスザクは、終わり行く夏の気配にただ身を任せるしかなかった。
ブリタニア軍に身を投げた時に覚悟はしていたが、まさかこれほど夏休みを削られることになるとは。
軍での休暇申請もし忘れてしまっていたし、今年の夏はこのまま終わるのだろう。
今更そんなこと言っても遅いよな、なんてぼやいて、窓の外に溢れる猛烈な日差しへ目をやった。
(まあ別に…夏が終わるからって何かある訳でも、ないんだけど)
ふう、と人知れず一息吐く。

ちらと読書中のルルーシュへ目を遣る。
元皇子という複雑な立場を隠すためにあまり目立つ場所へは赴かないルルーシュ。彼はどんな夏休みを送ったのだろう。
日焼けなぞの気配も感じさせない白い肌から見るに、やはりプールや海、まして山などには出かけていないのだろう。
クラブハウスでずっと読書でもしていたのだろうか。
(キノコ生えちゃうぞールルーシュ…)
ふふ、と苦笑い。
もう少し早く彼の現状に気がついていれば、半ばに彼とナナリーを誘って何処かへ出かけても良かったのだが。
自分というボディガードが着いていれば2人も安心して遊べるのでは、なんて考えて、少し誇らしげな気分になる。
(あーそっか…まだ10日あるんだもんな、ルルーシュ誘って遊びに行くのもいいかもしれない)
一番大切な友達と、その妹との夏。それだけでこの40日余りの夏休みが意義のあるものに思えてくる。
(そうだ、そうしよう)
そこまで思い至って、スザクはようやっと口を動かした。彼を呼ぼうと、「ル」の形に。



「スザク!」
「え、なに?」
しかしその声は、ルルーシュを見詰めていたその視界に割り込んできた、青髪の友人によって遮断された。
いつのまにやら隣まで来ていたリヴァルが、此方へ向けて「頼む!」と手を合わせている。
何を頼まれたのやらいまいち流れが掴めないスザクは、苦笑いを浮かべて首を傾げた。
「世界史の課題写させて、まるで解んねぇの!」
「世界史も?って言うかもしかして何一つ終わってない?」
「その通りですっ」
ニーナの物理ノートを小脇に挟んでそう頼み込んでくるリヴァル。
手伝ってやりたいところだが、如何せん頼まれた教科に問題があった。世界史は苦手だ。
「僕の写したら間違えてる箇所が一緒になって、先生にバレちゃうんじゃないかな」
「そ、そんなー」
情けない声が上がる。苦笑いを浮かべるしかない。


「教えてやろうか?」


ふとそんな空間へ響いた低めの声。
声の主はルルーシュだった。
彼は分厚い本へ視線を落とし、いつも通り頬杖をついたまま、リヴァルへ語りかけていた。
そう、言われたのはリヴァルだのに、何故かスザクもはっとしてルルーシュの方へ向き直ってしまった。
何か引っかかるものを感じて。


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