ボロキレノベル

□KIDS
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「どうして今まで作ってくれなかったんだ?」
「いや、ルルーシュの食事の方が美味しいし、タイミングが掴めなくて」
でも今日は君がずっと寝てたから、とスザク。
そして彼は、徐にルルーシュへと近づき、耳打ちした。
「料理上手くなったら、もっと好きになってくれるんでしょ?」
「なっ…」
顔を真っ赤に染め上げていくルルーシュを前に、スザクはまた嬉しそうに笑う。
そしてスキップ交じりでテーブルの元まで行くと、軽やかに椅子へ腰掛けた。
「さぁ2人とも、冷めないうちに」
言われ、ルルーシュも頬を押さえながら自分の席へ着く。隣では嬉しそうにナナリーが箸を持っていた。
「いただきますスザクさん」
「…いただきます」
「どうぞ」


だがしかし、味付けがかなりしょっぱかった。
これは指導の余地有りだな…とルルーシュは内心微笑んだ。



◇ ◇ ◇ ◇



食後は先日ルルーシュが作ったゼリーを楽しむ。
ナナリーとスザクがそれを美味しそうに頬張る間に、ルルーシュはスザクが散らかした台所の片付けに入った。
どうやったらこんなにキッチンが汚れるのだろう…と半ば疑問に思いながら。
僕が最後までやる、とのスザクの申し出は断った。更に汚されてしまいそうで怖かったから。



「そういえばさ」
手を洗剤の泡塗れにしているルルーシュを、背後から抱くスザク。
ナナリーの気配が無い。スザクが既に部屋へ送ってくれたようだ。
空になったゼリーの器とスプーンを差し出されたので、それもシンクへ放った。
「下らない用事だったら遠慮してくれ。邪魔だ」
はぁ、と溜息混じりに。しかしエプロンを着る腰を抱くスザクの腕は、力を抜かない。
「下らなくなんて無いよ。大事な用」
「何だよ」
食器と食器が触れ合う音が響く。
「ルルーシュ最近、バイト忙しそうじゃない?」
「まぁそうだな。前よりも多く入れてるし」
「いやそれはそうでしょうけども、僕が聞いているのはそういうことでは無いんですよ先生」
「誰が先生だ」
冷たくあしらえば、スザクはぎゅううと更にきつく全身でしがみついてくる。
肩に彼の顎が乗り、栗色の癖毛が視界の端に映った。

「…僕もっと生活費入れたほうがいい?」
首を横に振る。
「別に家計が苦しくてバイト時間増やしてる訳じゃないんだ。お前が気にする必要は全く無い」
そう、冗談じゃなかった。
そもそも「いらない」と言っているのに、スザクは勝手に収入の一部をランペルージ家の口座に振り込んできているし。
自分が居候であることを未だにかなり気にしているらしいのだ。変なところで律儀であるから困る。
心遣いは有難いのだが、それではスザクの高収入に寄り掛かっている様な気がして、何となく自分が許せなくなる。
自分の事は自分で。それが近頃のルルーシュのモットーなのだ。
(大体こいつは奨学生じゃないから、アッシュフォードの馬鹿に高い学費だって自分の稼ぎから出さなきゃいけないんだ。そんな奴から搾り取れるか)
思考が現実的なのは相変わらずである。


「じゃあなんでそんなに根詰めて働いてるの?」
もっともな質問が返って来た。
隠す理由も無いな、と肩を竦めたルルーシュは、食器を洗う手を休めて、スザクを振り向いた。
翡翠の美しい瞳が丸くなる。

「引越したいんだ」

ひっこし、と復唱するスザクの唇。
今一その言葉の意味するところを理解していないらしいので、ルルーシュは更に噛み砕いて語った。
「アッシュフォードの近くに、新しいマンションが建っただろ」
「うん、バスから見えるね」
「このマンションは学園から結構離れているからバス通学は止むを得ないし、何しろ段差が多くて車椅子のナナリーにとっては移動が困難だ。だがあのマンションは学園まで徒歩15分、しかもバリアフリー。ちょうどこの部屋に3人住まいは厳しいと思っていたところだし、思い切って引っ越そうかと思ってな」
「…そっか」
「ナナリーのために出来ることは何だってしてやりたいんだ、俺」


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