ボロキレノベル

□ユニバース
3ページ/3ページ



『変な事言ってごめんね。でもなんか、ふとね、そう思って』

それにしても、随分なことを考えるものだ。
暇ではなかろうに。
どうせ思いつきで物を言っているだけなのだろうけれど。
けれど、
嗚呼けれど、
胸の内に熱いものが溢れ出す。

『こうして…ふとした瞬間に、堪らなく、君の声が聞きたくなる』

出会えた幸運を噛み締めるように、
同じ空の下に息衝いているのだと確かめるように、
甘く激しい衝動に身も心も任せて、
愛しさを、囁く。

『君が居て良かった。君が生きていて本当に嬉しい。君が――君が僕に力をくれるんだ』

瞬く白や青の星、同じ輝きを瞳の水晶に映し出し
貴方は今も笑っているだろうか。
照れた様に頬を掻いて、はにかんでいるのだろうか。
それはとても―愛おしい。




『ありがとう』




電話口の向こうが僅か騒がしくなった。
夜風が少し冷える此方の静寂とは、まるで正反対に。
彼を呼び出す、少々荒らげな声が聞こえる。
軍務の最中に電話などをしているからいけないのだと、半ば呆れた。

『ごめん呼び出しだ、切るね』

掛けて来たのは向こうであるし、別段用件があった訳でも無い。
謝られる筋合いは無いとの旨を伝えると、やっぱり「はは」と笑い声が返って来た。

『そうだね、用事は…うん、僕が君の声を聞きたかったって事、それだけだ』

簡潔すぎるけれど、其処に想いは充分すぎるほど詰っていた。
離れていても想ってくれていると、心地よい自信で心を満たしてくれる。
無意識下の事ではあるのだろうけれど、それは此方を――暖かくしてくれる。
どうしてこんな人間が自分を選んでくれたのだろうと、切なくもなる。
泣きたくなるほど、愛しかった。
そう、礼を言いたいのはこちらの方だ。
ありがとうと。
一緒にいてくれて、笑いかけてくれて、本当にありがとうと。
そして、同じ星を見られていることがとても嬉しいんだと、伝えたい。
口の中に住む悪魔を取り払う術を見つけた時に伝えよう。
笑顔で真直ぐに。
眼を見て。




『また明日ね』


「ああ…また明日」




きっと同じ星空の下
同じ願いを掛ける人もいる
いつか出会う準備をしてる

そう考えると、世界は少しだけ
優しいものに見えるんだ





【END】


←ノベルtop
←Main
←ボロキレ


.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ