ボロキレノベル

□Re:いちばん好きだよ
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「お待たせー」
そう笑って店から出てきたスザクは、何やら小さな紙袋を手にしていた。
あんなに財布の中身と闘っている様子だったのに、結局買い物をしてしまったらしい。
呆れて物も言えなくなる。
昼飯奢れとか言われても奢らないからな、なんて心のなかで呟いた。


◆ ◆ ◆ ◆


クラブハウスへの道程を共に歩く間も、車道側はスザクが占拠していた。
それとなく車道側を歩いてやろうというルルーシュの試みは、脆くも崩れ去った。

そうこうしているあいだに、2人はクラブハウスの玄関ホールまで辿り着いてしまって。
ルルーシュは肩を落としつつも「ナナリー連れてくる」と告げた。
しかし、その腕を引き、スザクはルルーシュを止めた。
普段の彼には垣間見ることの出来ない、少々強引なやり口だった。
だからこそ不審に思って、ルルーシュは彼を振り返る。

「なんだ?」
「ナナリーの前に、ちょっと」
言いながら彼が差し出してきたのは、先程の小さな紙袋。
みやげなら自分で直接渡せばいいのに。
そう訴えるような視線を読み取ってくれたのか、スザクは苦笑いをして肩を竦めた。
「君へだよ」
「は?」
「だから、ルルーシュへ僕からプレゼント」

一瞬間置いて。

「なんで!!」
唐突に上がった大声に、思わず瞼を結んでしまうスザク。
叫んだ当のルルーシュも、ハッとして口を抑えた。
しかし驚愕に震える口からは、怒号が溢れ出す。
「俺の誕生日まだだぞ!別に祝い事も無いし、記念日とかでも無い!馬鹿じゃないのかお前!!」
まさか自分が彼の財政難を呼んだとは思っていなかった為に、ルルーシュは混乱を極めた。
なんだ、プレゼントって。
何度も言うが、それよりも自分の食費を気にして欲しい!
そう叫ぶ前に、スザクはルルーシュの両肩を掴み「落ち着いて」なんて溢した。


「これはほんのお詫びの気持ちだから」
真直ぐに見詰めてくるその深緑に、偽りは無さそうだ。
しかし、意味が解らない。
「最近忙しくて構ってあげられなかったから…」
「なんだよ『構う』って!俺を猫か女か何かと勘違いしているんじゃないか!?」
「まさか。ルルーシュは人間の男の子でしょ」
スザクはさらりと否定を口にした。
しかしそれでは。
「…じゃあなんで俺をそんなに甘やかすんだ」
この疑問が残ってしまうではないか。
「女子供の様にちやほやされては、俺だって情けなくも感じる」
重いものを持ってくれたり。
いつも身体を気遣ってくれたり。
車道側を歩いてくれたり。
お詫びだ何だで最優先にしてくれたり。
スザクといると、自分は皇子に戻ったような錯覚を起こす。
何よりも大切にされているような、そんな錯覚を。


「なんで?」
しかし、悩むルルーシュとは対照的に、スザクの方はあっけらかんとしていた。
「僕が君を甘やかすのは当たり前じゃないか。情けなくなんかないよ」
さも何事も問題なぞ無いとでも言うように、彼はルルーシュの目を真直ぐに見詰めてくる。
そう自信満々に言われてしまうと、こちらとて返す言葉が見つからない。
「当たり前、とかじゃなくて…理由が知りたいんだと言っているだろう」
「りゆう?わかんないの?」
「解らないから聞いているんだ!語彙足りないんじゃないか!?」
焦れる。本当に焦れる。
苛立ちに任せてそう叫べば、スザクは嬉しそうに微笑んだ。



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