ボロキレノベル

□Re:いちばん好きだよ
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性別は同じだ。
勿論のこと歳も。
だからこういう扱いを受ける謂れは無い。

「重くない?」

いくら心の中で叫ぼうとも、彼はやたらと気が回るから、いつもそう問い掛けてくる。
そして厄介なことに、その問いは「そうでもないよ」とか「何が入っているんだろうな」とか、そういう世間話的な応答を求めている訳ではないのだ。
求むるはひとつ、「ああ」の肯定のみ。
だが、それを口にする事は、少々プライドの瓦解を誘う。
同じ男なのに、甚だ情けないではないか。

だから、ルルーシュは押し黙った。
担任から押し付けられたダンボール箱が幾ら重かろうと、彼の手を借りることはしたくなかった。




「さっきから数歩しか進んでないけど」
そして、一番触れられたくない部分に突っ込んでくる彼。
う、と声が詰まった。
だって仕方が無いのだ、こんなに重いものを1人で運ばせようとする担任がいけないのだ。
自分が非力な所為では無い!
そう思惟するも、心の声はスザクへは届かない。
「やっぱり僕が持つよ。その方が絶対早い」
ルルーシュの鞄と自分の鞄を持った彼は、ぽつりとそう呟く。
ルルーシュがこの荷物を片付けるまで帰れないことが解っていたのだろう、彼は酷く不満気だった。

「早いかどうかは関係ない、俺がこれを資料室に持って行くよう頼まれたんだから」
理論は間違っていない。
理屈っぽいと言われたって何でもない。
自分が納得できればいいのだから。
「解ったよ…でも転ばないでね。顔に傷でも作ったら大変だから」
「顔に傷?女じゃあるまいし」
「僕が嫌なんだってば」
「俺だって痛いのは嫌だ」
「あぁ、うん」
苦笑いをして、スザクはルルーシュの後に着いて至極ゆっくり歩いてきた。



やっとのことでダンボールを資料室に運び終わった頃には、額にじとりと汗が滲んでいた。
全く、体力不足がこんな所に響くとは思わなんだ。
「お疲れ」
隣で、ハンカチと鞄とを差し出してくるスザク。
それを静かに受け取って、彼のハンカチで汗を拭った。
「休む?帰る?」
「…帰ろう」
「解った」
言葉数は少ないけれど、そこから伝わってくるスザクの気遣いは計り知れなかった。
だから、「おんぶしようか」なんて言葉を喰らわなければ、素直にお礼を言ってやれるのに。
恥ずかしい事を言うな、と彼の頭を一叩きして、資料室を後にした。

「一緒に帰るの久々だね」
そんな嬉しそうな彼の呟きが、夕暮れの廊下へ響いた。



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