ボロキレノベル

□ある種のスペクタクル
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ルルーシュ探して三千里、なスザクの心情は先程よりも焦りを帯びていた。
男子が卑猥な視線でルルーシュを見ていることに気が付いたから。
早く、早く見つけないと、ルルーシュが襲われてしまう!
冷や汗をかかんばかりの慌て様だ。
混乱した彼は、ルルーシュはまだ女生徒服に着替えていないという事など、すっかり忘れてしまっていた。


◆ ◆ ◆ ◆


そして、行き着いた先はいつもの場所。屋上だ。
扉が開くと、高所ゆえの強風がぶつかって来た。
慌ててスカートの裾を押さえ込む自分が、少々気恥ずかしく感じる。
「ルルーシュ!」
呼んでも、其処に人影が現れることはなかった。
やはり、当てが外れたか。
しかし。
落胆して屋上を後にしようとした彼の腕を、誰かが掴んだ。
突然の事で体勢を立て直せなかったスザクは、そのまま倒れこんでしまう。
誰かの上に跨る形になってしまった。



「…スザク」
そして、眼下で囁いてきた愛しい声。
「る、ルルーシュ!!」
正に藁にも縋る想いで、自分の身体の下に倒れるルルーシュを抱き締めた。
やっと見つけた。
その安堵感に包まれて、スザクは彼の細い身体を味わうように包むこむ。
「重い、しかも痛い」
「あ、ごめん」
不貞腐れた声で抗議されたので、慌てて身体を起こす。
ルルーシュの上半身も引っ張り起こしてやって、2人で向かい合うように座った。

「なんだよその格好…」
そして案の定、女装に突っ込まれてしまった。
スザクは言われてから漸く気付いたのだが、ルルーシュは逃げただけあって未だに男子制服のままだ。
2人だけのこの空間で、自分だけが妙な格好をしていることで、スザクは恥ずかしさに耳を赤くする。
「これは、今日のお祭りのためにって会長さんが」
「それで着たのか」
「だって着ないとルルーシュ探しにいっちゃダメだって言われて」
「俺を探すためにそんな格好に甘んじたのか」
「…迷惑だった?」
「…迷惑じゃ無い」


ルルーシュはまじまじとスザクの装いを見遣る。
そして、なんだか可笑しそうに笑みを溢すのだった。
くすくすと少し笑うと、ひとつ咳払いをして彼はスザクに向き直る。
「そんな格好で校内を歩くな。襲われたらどうする」
はい?とスザクの口が大きく開く。

「お前は、その、結構可愛い顔をしているから、心配になるだろう…」
「何言ってるのルルーシュ…」
「なんだその顔は!呆れているのか!」
恥ずかしそうに憤慨するルルーシュの姿は酷く滑稽である。
それ以上に。
「それ、そのまま僕の台詞なんだけど」
「どういうことだ」
「だってルルーシュは、第1回の時みたいに襲われたりするの嫌だから逃げてきたんでしょ」
「何のことだ?俺はただ面倒臭いから逃げてきただけだが」
あくまで眉間に皺を寄せたままのルルーシュ。
前回の出来事を覚えていないということではないだろう。
ということは、余程の鈍感さんなのだ。
スザクは大きな溜め息を吐いた。
「…それで無自覚は罪だよルルーシュ」
「は?」
何から何まで隙だらけだ。
これではいつ襲われたって可笑しくない。
スザクは猛烈な不安に駆られるのであった。


「じゃあ、僕が会長さんに頼んで、ルルーシュの女装だけは避ける様にするから」
そうでもしなければ、彼の貞操を守りきるのは難しい…本気でそう感じた。
しかし、一方のルルーシュは大層不思議そうな顔をしている。
「何故そんなことをするんだ」
「え、だって」


「お前は俺の女装が見たくないのか?」


ごほ!とむせてしまうスザク。
ルルーシュが平然とそんなことを言うものだから。
「女装男を見て喜ぶ奴なんていないだろうが、お前なら面白がってくれそうだしな」
みんな喜んでるんだよ、特にルルーシュのは!と心中で叫ぶスザク。
「そんな格好してまで必死に走り回ってくれたお礼だ…女の服着た俺を見て、腹が捩れるくらい笑え」
笑うどころかそんなもの見たら呼吸困難になる!と心中で泣くスザク。

「なんだよ、やっぱり見たくないのか」
「とんでもない!見たい、見たいです!!」

欲望に負けてしまう自分が、酷く情けなかった。


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