ボロキレノベル

□ある種のスペクタクル
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周囲の視線が痛いと感じたのは、転校初日以来だ。

枢木スザクはまた廊下を駆け抜けていた。
極端に短いスカートの裾を気にしながら。
(スースーする…)
聞こえてくるのは、黄色い声や笑い声。
スザクはそれが恥ずかしくて仕方が無かった。
無論、彼はその大方が男装した女子からの「かわいい」という叫びだということに気付いていないのだが。
彼は辺りに視線を配りながら、必死に走り回った。
逃亡犯捕縛のために。
「ルルーシューぅぅ!」
こんな格好で独りになるのは酷く心許ない。
スザクとしては一刻も早くルルーシュを見つけて生徒会室へ戻りたい心境だった。


◆ ◆ ◆ ◆


「よう枢木、大変だな」
しばらく校舎を回ってその後。
声を掛けてきたのはクラスの男子たちだった。
体格のいい彼らがミニスカートとニーソックスを履いているのを見ると、さすがにげんなりする。

「あの、ルルーシュ見なかった?」
いや、と彼らはゆっくり首を横に振る。
そして一瞬置いて、声を上げて笑い始めた。
「なんだ逃げたのか?さすがに嫌になったんだろうなぁランペルージも」
何かを知っているような口ぶりだ。
さすがって?と問い直せば
「大変だったんだぜ、アイツあんまり可愛いもんだから1日中追い掛け回されてさ…女にも男にも」
「なー!襲われかけたって噂まで立ったし」
「確かにアレはヤバかった」
「歩くイメクラ、てか」
ゲラゲラと腹を抱えて笑うクラスメイト。

不幸なことに、彼らはスザクの表情が見る見る固まっていくことに気が付いていなかった。

「あぁでも、枢木もいい線いってんじゃん?」
目に涙を滲ませた1人が、ふとスザクを振り返る。
それに賛同する他の男子達。
「軍人なんて言うからムキムキかと思ったけど、以外と線細いのなぁ!足とかいい感じじゃん」
「あぁ確かに…まぁルルーシュには及ばないけどな」
「それ言っちゃおしまいだろ」
何かがツボにはまったらしく、彼らはひたすらに笑い声を上げる。
そして。
「俺らと付き合わねぇ、スザクちゃーん」




廊下に数人の男子が血を流して倒れていたことは、言うまでも無い。



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