ボロキレノベル

□ある種のスペクタクル
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「まずいっ」


今朝は早くから会合があるとルルーシュが言っていた。
それをすっかり忘れて眠りこけていたスザクは、朝日が差し込む廊下を小走りで駆けていく。
腕時計の示す時間は、集合の1分前。
(遅れたりなんかしたら、ルルーシュ怒るだろうなぁ…今日1日は口きいてくれないかも)
あんまりな話だが、彼ならば有り得る。
考えただけで恐ろしい。近くに居るのに愛しい恋人と話せないなど。

「う、絶対やだ!」
それだけは避けたいと思惟したスザクは、スピードを上げて直線を駆け抜けた。
その必死の形相を目に留められた生徒は、よっぽど動体視力のいい人間だけだったろう。
疾風の如く生徒会室へ向かう彼の姿は、それ程異常に見えた。
愛ゆえか。


◆ ◆ ◆ ◆


「おはようございますっ」

息も絶え絶えにそう叫ぶと、勢いよく室内へ踏み込んだ。
途端、前を見ていなかったスザクは誰かとぶつかってしまう。
目の前に広がる黒一色。男子制服の色だ。ということはこれはリヴァルか。
鼻を押さえながら、目の前に立つ『男子』を見遣る。
「ご、ごめん」
「もぉ、気をつけなさい」
リヴァルにしては嫌に『オネェ言葉』だった。
流石に不審に感じたスザクは、制服を纏うその身体を凝視する。
絞られたウエスト、大きく盛り上がったバスト、肩まで伸びた金髪。

まぎれもない、それはアッシュフォード家令嬢のミレイであった。

「わ!?」
何事かと後ろへ飛び退いたスザクは、また誰かにぶつかってしまう。
振り返った其処にはリヴァル。
しかし彼が纏うのは…女子生徒の制服。
「おわぁーっ!」
これは流石にダメージが大きい。
対し、リヴァルは「なんか反応が失礼じゃない?」とむくれる。
そう言いながらも、彼は驚きで尻餅を突いたスザクを助け起こしてやった。

一方のスザクは蒼い顔でそんな友人を見上げる。
「その格好は一体!」
趣味か、趣味なのか。そう震えながら呟くスザクにリヴァルのチョップが振り下ろされる。
「んな訳無いだろ、会長だって男装してんじゃん」
話題に上ったミレイが「はぁい」と手を振る。
確かに、見れば室内のシャーリーとニーナも男子制服を着ていた。
しかし、趣味で無くば何だと言うのか。
転校してきたばかりのスザクには皆目検討も付かない事態だ。
そもそも、今朝は会合があるから集合が掛かっていたのではないのか。


「そっか、スザクにはまだ説明してなかったわね」
どこか凛々しい雰囲気さえ醸し出す男装のミレイが、ひらりと軽やかな足取りでスザクの元へ歩み寄った。
「これは我がアッシュフォード学園ではよくやる『お祭り』なのでーす」
「お、おまつり?」
「今日のお祭りは、今年度第2回『男女逆転祭』なのでーす」
「は!?」
驚くのも無理は無い話だろう。
普通じゃありえない話だ。
いや、これが此処の普通ではあるのだが。
ともかくスザクの理解の範疇は余裕でブレイクしていた。


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