ボロキレノベル

□きれいにして、
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見て、と今度はスザクが呼んだ。

今日は生徒会の会合もないからと、鞄を手に教室を後にしようとしていたルルーシュ。
放課後の教室に生徒は少ない。
話し声も僅かの中、幼馴染みがひっそりと自分の名を口にしたので、踵を返して其処へ向き直った。
彼は周囲の視線を気にしながら、あるものをルルーシュへ示してきた。

「これ」
淡い青の封筒。
「何だよ」
見れば、彼は何だか困った顔をしてこちらを見ていた。
何かを告げたそうな表情。
「用が無いなら帰るぞ」
「待って、これ見て」
「見てるよ」
スザクが突き出している封筒をボンヤリと見遣る。
しかしふと、あることに思い当たった。
彼と『封筒』という単語に符号を見つけたのだ。

「アンが」

やはり。

「何だ、ラブレターを俺に見せて優越感に浸ろうっていう魂胆か?お前も随分と根性を曲げたものだな」
いや、彼にそのつもりが無いことなんて、幼馴染みの自分が一番よく解っている。
しかし平静である事をアピールせずにはいられなかった。
生憎ながら、彼が誰かに好意を寄せられたとて、悔しくもなんとも無いのだ。
彼と何かを張り合っているつもりはないし、自分は彼女を好きでもないし。

「違うよ」
スザクはそう低く呟いて、俯いてしまう。
「まだ読んでいないのか?早く読んで返事してやった方がいいだろう」
「僕が読むものじゃない」
「何を言っているんだ、それじゃ彼女に失礼だろう」
何を迷うことがあるのか。
視線が定まらない彼は、何かを言いよどんでいた。
「あの、ルルーシュ」
いい加減苛立つ。
朝からどうでもいい事に神経を使いすぎだ。
疲れることこの上ない。
些細なことにちくちくと、刺激されすぎだ。
不快なことこの上ない。


「帰る」
ついと顔を背け、教室から出た。
後ろにスザクの声を聞いたが、振向きもせずに。


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