ボロキレノベル

□きれいにして、
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ふと眼にした、いつもは自分の隣にいる彼。
その彼と、女子。
校門から流れるように入ってきた彼らの頬には、穏やかな微笑み。

息を飲んだその間に、連れ立つ2人は姿を消した。
人込みの中へ消えていくそれを見送って、漏れる溜め息と共に自分も人波へ揉まれて行った。

嗚呼、また一日が始まる。



きれいにして、




「おはよルルーシュ」

教室で掛けられた声は、いつもと何等変わらない優しい声だった。
幼馴染みの枢木スザク。

「あぁ、おはよう」

やっとこの学園にも慣れてきたらしい彼は、ルルーシュの友人を周囲に侍らせて笑う。
見慣れた笑顔だ、けれどそこから与えられる印象は酷く異なる。


そして。
「おはようルルーシュくん」
朝、幼馴染みの隣にいた女子。
そういえば見たことのある顔だ。クラスメイトだったか。
印象が薄すぎる。
「今日は早いんだねー」
彼女はスザクの隣の席に腰掛けて、そう笑いながらルルーシュを見上げた。
不快だ。

「今日はって、まるでいつも俺を見ているような物言いをするな」
薄く笑ってそう反撃してやれば、彼女は困ったような顔をして
「だっていつもスザクが話してるから」
なんて言う。
ほぉ、スザク。
一丁前に呼び捨てか…と宛ら何処かの捻くれ小姑の様な感想を持ってしまう。
「笑っちゃうんだよー『ルルーシュは朝が弱いから、寝坊しないか毎日心配で』なんて言ってるの」
「そう、それは愉快だな」
本当に。

「やめてよアン、ルルーシュに笑われる」
苦笑いを浮かべながら、幼馴染みは彼女を制した。
アン。それがこの女の名前。
言われてみればそんな奴もいたな、と他人事の様に思惟した。

それよりもなによりも、スザクの「アン」と呼んだ声が耳に張り付いて離れなかった。



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