ボロキレノベル

□くるくるまわる
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黙り込んでしまう此方の様子を覗き込んで、彼は何だか酷く可笑しそうに高笑いを上げた。
片手で自らの額を押さえ、息を乱して。
「あはは、ああ、やめてくれよ面白いやつだな」
彼の笑顔は好きだけれど
こういう笑い方をされるのは正直苦痛だった。
嘲られている気がして、否、気のせいではないのだろう。

「傷ついたのか?なんだよお前、狡いんじゃないか?俺に求めるばかりで何もしてくれないくせに、その気になった時だけ俺をそんな厭らしい目で見るくせに。なんだよその目、これじゃ俺が全て悪いみたいじゃないか、お前が全部いけないのに、俺が所為だとでも言いたいのか!?狡い、狡いんだよ!」

その口から溢れ出す言葉は、水のように吐露される。
流れは留まりを知らない。

「求めるものを与えてくれもしないくせに、偉そうに俺の隣に立つな!一丁前に俺の中を蹂躙するな!お前なんか入ってくるな!」


「スザクのくせに!」


普段は物静かな彼だから
一度爆発すると、その暴れまわる劣情を抑える術を見出せなくなるのだ。
此方はそれを知っていたから、あえて何も言わなかった。
余計なことを言えば、本当に収集がつかなくなる。
それも解っていたから。
けれども。

「何か言えよ!」
彼は、求めた。
綺麗な瞳を涙に濡らし、突き刺すような視線で以って此方を睨みつけてきた。
悲痛な色が宿る。
言え、何か言え。
彼に一番伝えたいことは何だ。
何を言われようと貫き通したいと願う、己の信念は何だ。

「僕、は」
心の中にいつもある、ひとつの想いは、何だ。



「君が好きだ」



久しぶりに、声を出した気がした。




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