ボロキレノベル

□くるくるまわる
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「何を困っているんだ」
それが解らない。

「俺が恐いのか」
それは無いけれど。


「俺のこと、嫌いなのか」


アメジストに瞳が、見るも明らかに曇っていった。
ゆっくりと首を振るのに、其処から疑惑の雲は退かない。
「愛しているんだろう?」
しゃなりと猫のような格好で近寄ると、彼は此方の膝の上にそっと白い手を乗せた。
頷く。
間近に在った水晶玉の様な目と視線が交錯した。
「じゃあ証明して見せろよ、お前がどれだけ俺を愛しているのか、はっきり見せてみろよ」
卑猥な赤を唇が、一言一言を噛み締めるように、言葉を紡ぎ出す。

その唇へ、自分のそれを重ねた。

彼の体温を、彼の呼気を、全て奪うように。

けれど、身体は彼から引き剥がされた。
突き飛ばされる様な形で、ベッドから落ちて、床へ転がった。
ベッドの上では、彼が制服の袖でその唇を拭っていた。
「これしかできないのか」
痛々しい言葉が降ってくる。
「これしかできないんだな」
その瞳に感情は見えない。
「無難なことしかしないんだな。そうだよな、お前ってそういうやつだもんな」
沸々と、彼の中に湧き上がってくるものを、此方も感じた。
「いつもそうだよな。此方の機嫌を伺う事しかしないで、危ない橋は渡らずにじっとそこに佇んで、俺が言わないと何も行動を起こさないもんな。お前そういうのなんて言うか知ってるのか」
畳み掛けられて、何も応える事ができなかった。
彼は薄く笑う。


「臆病者っていうんだよ」


その言葉は、知っていた。



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