ボロキレノベル

□ロンリーキャッツ
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好きなんだけど、いつも片想いで。


幼馴染みであり唯一無二の恋人でもある枢木スザクは、俺にそう言って笑った。
片想い、という表現はせめて避けて欲しかった。
好きなのか、愛しているのかと、問い詰めたくなるじゃないか。
妬いているかって?
端から見たならばそうかもしれない。
だが俺はそれを認めたくなかった。
嫉妬をするなどありえない。

俺が

たかが仔猫如きに




ロンリーキャッツ




「ルルーシュ見て見て、かわいいでしょ」

突然部屋へ入ってきたかと思えば、これだ。
でれんと間抜けに微笑むスザクの頬には、引っ掻き傷があった。
彼は黒の仔猫を抱え上げ、ベッドへ腰掛けていた俺の顔の前まで持ってくる。
猫の折れそうに細い前足には、白い包帯。
怪我か?
「正門の前で怪我してたから連れてきちゃったんだ…暴れん坊で手当てが大変だったんだけどさ」
やっぱり、と俺は大袈裟に肩を竦めた。
そんなことだろうとは思ったんだ、お前はお節介なほど優しい男だから。

呆れ返る俺の様子にも気付いてくれず、スザクは猫の顔を更に俺へ近づけた。ぐい、と。
色素の変異か、紫色をした猫の瞳と眼が合った。
「毛並みもいいし、どっかの飼い猫だと思わない?」
「あぁ…かもな」
「気品のある顔をしてるよね、美人だぁ」
「猫の顔なんてどれも同じじゃないか」
「だめだなルルーシュ、それは動物嫌いな人が言うセリフだよ」

抱えた猫と向き合い、文字通り猫なで声を出す。
にゃーにゃー、と彼が言えば、猫もにゃーにゃーと声を返す。
「おや、君はオスかにゃー」
バンザイをさせ、猫の下腹部を見て満足気に微笑むスザク。
しかし一瞬を置いて、猫は猛烈な勢いでスザクの指に噛み付いた。「ほわぁぁ!」と、これもまた間抜けな悲鳴が上がる。
馬鹿かこいつは。
「救急箱持ってくるよ」
「平気だよ、舐めとけば」
「適当だな…」
「ルルーシュ舐めてくれる?」
「ほざけ」
「はは、恐い恐い」


猫はスザクの腕から抜けると、方向転換して俺の脚へ擦り寄ってきた。
甘えても餌は無いぞ、猫。
「ルルーシュは昔っから動物によく懐かれるよね」
指をくわえてそんな様子を見るスザクは、何処か悔しげだ。
「お前は相変わらず動物に好かれないな」
嘲って反撃してやると、スザクは「そうなんだよね」と肩を落としてしまう。
此処は笑って流して欲しいところだったのだが。
本気で落ち込まれてもリアクションに困るじゃないか。


「こいつにだけは好かれたかったんだけどなぁ」


俺の足元にいる猫を、暖かな視線で見詰めるスザク。
最近は俺の事すらそんな目で見ないくせに。
…って。
(何を考えているんだ、レベルの低い思惟をするな)
頭を数度小突き、馬鹿な考えを抹消した。


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