キリバン・頂き物小説

□4500番フミフミ(魅莉サマ)
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しん…、と静まりかえる闇。

"何か"が動く気配は無い。
一人、静かに細長く伸びた電柱のてっぺんに降り立ち、呼吸を整える様に一つ深呼吸をしてから静かに目を閉じる…


――神経の束先を、辺り一帯へ延ばすように…


静かに、ゆっくりと…


静寂の闇に潜む、常とは違う、異質な黒い切っ先を捜して…






「まだか!イチゴ!!」

「……ッ!!」


ブツン!と糸が切れるみたいに集中力が途切れ、辺り一帯に飛ばしていた霊力の束が途切れて散漫した。


「……てンメェ…ッ…ルキアぁッ!」

苦手な霊圧を探る訓練の為に、必死で集中力かき集め、テスト中でもこんな集中出来ないだろうってくらい頑張り、後少しで見つけられるか…!?…という所で。
不粋にも下から大きな声を出して集中力を途切れさせてきた小さな影に、これでもかという位怨みを篭めて睨み付ける。


「邪魔すんなよ!せっかく良いトコまで行ってたのに!つか話し掛けるか普通!?あの状況で!?」

「喧しい!お前の鈍い探索に付き合っておったら日が明けてしまうわ!さっさと逃がした方へ走れ!」

言うが早いか、先程逃がした虚が去っていった方向へ駆けていく影に、慌てて電柱から飛び降りるとその後を追い掛けて走り出した。


「ちょっ!コラ!!一人で勝手に突っ走ンなよ!!」

「お前より余程私の方が探索能力は優れている!さっさと後に着いてこい!!」

「ンだよそれ!苦手な事を克服しようと頑張ってるヤツに向けて言う事か!?」

「そんな事は実戦では無い時にやれ!」

「はぁ!?実戦じゃなきゃ虚いねぇだろが!!」

「そんなモノは浦原にでも言ってなんとかしてもらえ!!」


二人して横並びになり全力疾走しながら交わされる言葉の応酬に、どんだけ横暴なんだコイツは!!とイチゴが心の中で叫び、まるで"アイツ"そっくりだ、と悪態を付いた所で、ガゴン!!…と、後頭部に痛烈な衝撃。


「――〜ッっ!!!」

両手で痛む後頭部を押さえ、声にならない悲鳴を上げてその場にうずくまれば、目の前に腰に手をあてて仁王立ちするルキアに睨み付けられ。


「…貴様、今非常に不愉快な発想をしただろう」


地を這うような低い声で見下ろしてくる相手に、そういう所も似てんだよ…ッ、と人の後頭部に回し蹴りを決めてきた相手を、上目使いで恨めしそうな視線を向けた。

 
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