キリバン・頂き物小説

□2500番フミフミ(眠サマ)
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◆ブラザーコンプレックス◆



ずっと一緒に育ってきた兄弟。


母親の胎内から、産まれる時まで、ずうっと一緒。

片時も離れる事なく、何をするのも、何処へ行くのも、いつだって一緒。



「ずっと一緒にいようね」
なんて約束しなくたって、そもそも"離れる"なんて選択肢が初めから存在していなかった。

小さい頃は、着る服だって三人一緒で、一人だけ違う服を着るなんて絶対に有り得ない事だったし、持ってる物も必ず三人一緒。玩具も食器も鞄も靴も、同じ物が三個づつ。



 ずっと一緒
 なんでも一緒



そんな三人の、"当たり前"の日常が崩壊したのは5才の時。
幼稚園に通いだしてから。

三人の内、二人は "うさぎさん組" で一緒だったのに、一人だけ "らいおんさん組"になってしまったのだ。


その時の事は、今でも幼稚園で半分伝説化されてる位、凄い騒ぎだった。

両親に連れられて仲良く三人一緒に入園してきて、いざ、組分けの為に、三人の内、黄色い頭をした子を担当の先生が連れて行こうとした瞬間、楽しそうだった子供達の顔が一気に顔面蒼白になり、抱え上げた黄色頭の子供が火が付いたように泣き出した。
「たすけて!つれてかないで!やーーー!!!」
…と、まるで人さらいに拉致されたみたいに狂った様に泣き叫べば、それを見た白頭と橙頭の子供が教師の膝小僧を思い切り蹴り飛ばして黄色頭を取り返し、脱兎の勢いで園外に飛び出して行ってしまった。

…その後はもう、子供と大人の町内鬼ごっこ大会で。

結局子供達は捕まらず、その日の夜遅く、三人揃ってヒョッコリと家に帰ってきた。


その後、普段は穏やかで優しい三つ子の母親が、稀に見ぬ厳しさで三人を叱り付け、このままではいけない、と将来に不安を抱いた両親が、泣いて縋る子供達をこの時ばかりは許さず、次の日からも問答無用で幼稚園に叩き込んだ。


それ以降、小学校、中学校と成長していく中で、少しずつ一緒に居ない状況にも慣れていき。
高校に上がった今では、兄弟以外の親しい友人も出来て、三人それぞれが、別々の時間を当たり前のように過ごすようになっていって。


そして段々と明確に、昔は見た目も中身もそっくり同じだった三人にも、それぞれに"違い"が生まれてきた。



 『個性』

と、一言で片付けてしまえば簡単な事。




…だけど、確実に。

その違いに悩まされる子供が一人、居た…

 
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