三兄弟部屋

□黒崎三兄弟物語10
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死神の力を手に入れ、圧倒的な力の差で、一瞬にして切り裂かれた虚の体が霧となって消えた後、茫然とその状況を眺めていた少女が我に帰り、慌てた様子でこの場の後始末をすべく、イチゴとシロにあれこれと命令を出した。


「……よし、取り敢えず、後は記憶の操作だけだな…」

粗方片付いた室内を見回し、そう言うと、懐から細長い掌大のモノを取り出して、気絶したままの母親の前にかざす。
それを見たイチゴがとめる間も無く、カチリ、と何かスイッチを押すような音が響いた…

「おい、母さんになにす…」


 ビヨ〜〜〜ン…


「…………」
「…………」


「…よし、記憶操作完了だ」

「一体どこら辺が!?」


思わず突っ込み入れるイチゴを完全無視して、傍に転がっているイチゴとシロの身体を示し、早く戻るようにと指示を出す。

「…戻るったって、どうすりゃいいんだよ?」

「そのまま体に近付けば、自然と中に納まる。とりあえず早く戻れ、そのままで居られては、少々マズイのだ」

少し慌てた様に言う少女に、取り敢えず言われた通り自分達の体を起こして、元に戻るべく体に触れた。

…と、その瞬間、しゅるんっ、とまるで体に吸い込まれる様にイチゴの霊体が死んだように動かない“体”へ吸い込まれた。


「…お?本当だ。なんか吸い込まれるみたいに勝手に入ってくんだな」

掌をグーパーして確認しながら、体に戻ったイチゴが感心した様に声を出す。

「当たり前だ。お主らはまだ死んではおらんのだからな。………ん?おい、貴様も早く戻らんか。まだやるべき事はたくさん残っておるのだぞ?」

自分の体を抱えたまま、無言で険しい顔をしているシロを目に止めると、遊んでいる暇はないぞ、と少女が更に口にした。


「…………。」

「…おい、シロ?どうしたんだよ?」


「………戻れねぇ」



…ぼそり、と低く呟かれた言葉に。

少女とイチゴが、驚愕に両目を見開いてシロを凝視した――…

 
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