銀魂

□水無月の不機嫌
2ページ/6ページ



奥の座敷に引きこもったところを見ると、しばらく出てこないとして、その間に買い物に行ってもよいだろうか?

でも、あれだけ不機嫌なら、俺が外出している間に帰ってしまうかもしれない――。

そう思うと、出かけることもできない。

とりあえず、保存しておいた山菜を取り出して料理することにした。

機嫌が悪い高杉に、少しでも機嫌をなおしてもらうためには、多少は豪華にみえる天ぷらだろうか?

いや、腹が立っているのは体調も影響しているのかもしれない。

ならば、胃に優しい煮物にすべきか……、と考えていた。



「おいっ」

台所で山菜を手に迷っていると、高杉の声がした。

いつもより機嫌が直るのが早かったな―と、振り返ると、さらに不機嫌マックスの表情をしている。

「テメエ、何してんだよ?」

「何って、夕飯を食べるだろう?山菜の天ぷらと煮物、どっちにすればよいと思うか?」

手に持った山菜を高杉の目にも見えるように、掲げてみた。

高杉は、俺の手にある山菜をチラリと見ると、すぐに俺の方を見た。

「テメエのウザイ顔を見て、飯など食えるか」

吐き捨てるように言うと、また奥へ戻っていく。

この言葉には、さすがの俺も腹が立って、高杉の背中を追いかけた。

「高杉、今のはいくらなんでも酷すぎるんじゃないか?」

追いついた背中に言うと、振り向きもしないで、声だけが返ってきた。

「俺が思ったことを言っただけだ。ついてくるな!鬱陶しい!」

「そんなに俺のことが鬱陶しいのなら、ここに来なければいいのではないか」

「テメエは、俺が邪魔だと言いたいのかよ?」

「なっ……」

そんな意味で言ったのではないのに、高杉の剣幕に驚いて、言葉に詰まってしまった。

その一瞬の間で、高杉の表情は不機嫌マックスから、冷め切った表情に変わってしまった。

「ああ、そうかよ。だったら、もう帰るわ」

高杉が本当に怒ったら、声のトーンが低くなり、怖いほど冷ややかな態度になる。

今日の高杉もぷいっと、俺から顔を背けると、まるで何もかもを自分の前から遮断するかのように、押し黙ると、玄関に向かって歩き出した。

鬱陶しいと言い出したのは高杉の方なのに、これでは、俺が追い出そうとしているようではないか……。

このまま帰らせたら、高杉は二度とここには来ないだろう――。

そう思うと、俺は途端に焦りだした。



次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ