銀魂
□水無月の不機嫌
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奥の座敷に引きこもったところを見ると、しばらく出てこないとして、その間に買い物に行ってもよいだろうか?
でも、あれだけ不機嫌なら、俺が外出している間に帰ってしまうかもしれない――。
そう思うと、出かけることもできない。
とりあえず、保存しておいた山菜を取り出して料理することにした。
機嫌が悪い高杉に、少しでも機嫌をなおしてもらうためには、多少は豪華にみえる天ぷらだろうか?
いや、腹が立っているのは体調も影響しているのかもしれない。
ならば、胃に優しい煮物にすべきか……、と考えていた。
「おいっ」
台所で山菜を手に迷っていると、高杉の声がした。
いつもより機嫌が直るのが早かったな―と、振り返ると、さらに不機嫌マックスの表情をしている。
「テメエ、何してんだよ?」
「何って、夕飯を食べるだろう?山菜の天ぷらと煮物、どっちにすればよいと思うか?」
手に持った山菜を高杉の目にも見えるように、掲げてみた。
高杉は、俺の手にある山菜をチラリと見ると、すぐに俺の方を見た。
「テメエのウザイ顔を見て、飯など食えるか」
吐き捨てるように言うと、また奥へ戻っていく。
この言葉には、さすがの俺も腹が立って、高杉の背中を追いかけた。
「高杉、今のはいくらなんでも酷すぎるんじゃないか?」
追いついた背中に言うと、振り向きもしないで、声だけが返ってきた。
「俺が思ったことを言っただけだ。ついてくるな!鬱陶しい!」
「そんなに俺のことが鬱陶しいのなら、ここに来なければいいのではないか」
「テメエは、俺が邪魔だと言いたいのかよ?」
「なっ……」
そんな意味で言ったのではないのに、高杉の剣幕に驚いて、言葉に詰まってしまった。
その一瞬の間で、高杉の表情は不機嫌マックスから、冷め切った表情に変わってしまった。
「ああ、そうかよ。だったら、もう帰るわ」
高杉が本当に怒ったら、声のトーンが低くなり、怖いほど冷ややかな態度になる。
今日の高杉もぷいっと、俺から顔を背けると、まるで何もかもを自分の前から遮断するかのように、押し黙ると、玄関に向かって歩き出した。
鬱陶しいと言い出したのは高杉の方なのに、これでは、俺が追い出そうとしているようではないか……。
このまま帰らせたら、高杉は二度とここには来ないだろう――。
そう思うと、俺は途端に焦りだした。