銀魂

□雨上がり
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桂は高杉の頬にこびりついている血に触れると、そのまま両手で頬を包み込んだ。
いつもは包帯で隠されている左目が見えている。
右目も腫れている。たぶんもうあまり見えていないのだろう。
そして、返り血は銀時のものなのだろう。
桂の頬に熱いものが流れた。
「こうしなければならなかったのか……」
「ヅラよぉ、男のくせに泣くな」
「泣いてなぞいない。これは雨だ」
桂は、ずるっと、鼻をすすると、両手の中にある高杉の顔を直視した。
「これからどうするのだ?」
「特に予定はね−な」
高杉の両頬を包み込んでいる桂の手の上に、高杉の手が重ねられた。
高杉の手があまりに冷たくて、桂の中に不安が広がった。
「二人で旅にでも出るか?」
「俺たちの新婚旅行だな」
桂は広がる不安を跳ねのけるように、努めて明るい声音で言うと、満面の笑顔をつくった。
「テメエ、何、寝ぼけたこと言ってんだよ」
「晋助、二人であてのない旅に出るのもいいではないか」
「あてのない新婚旅行なのか?」
「ずっとハネムーンが続くのだぞ。甘い甘い蜜月だ」
高杉は、桂の言葉に呆れた顔をしながら、桂の肩を抱きしめると、「そうだな」と、小さくつぶやいた。
高杉の肩越しに、境内を見渡すと、雨が止んで太陽の光が届いていた。
太陽の光の下に、さっきまで寝ていたはずのエリザベスが、立っていた。
掲げているプラカードに、『恥ずかしくって、見てられませんね』と書かれている。
桂が苦笑していると、『必ず帰ってきてくださいね。でないと、みんなが追いかけますよ』と、次のプラカードが上げられた。
「すぐにアイツらが追いかけてくるんじゃね−のかよ」
高杉が、プラカードに気付いて振り返って言った。
高杉の顔に笑顔が灯っている。
「そうだな。すぐに追いつかれそうだな」
「しつけ―からな。アイツは」
桂の中に浮かんでいる白髪の男を、高杉も思い浮かべているに違いない。
「幼馴染だからな」
桂は、そういうと、高杉に抱き付いた。
高杉の指が桂の顎を引き上げ、桂の唇は高杉の唇に覆われた。
冷たかった高杉の体が、桂の腕の中で少しずつ温もりを取り戻してきた。

抱き合っている二人の後ろに、雨上がりの虹が広がった。


(完)



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